吉本問題とワイドショー コメンテーターの発言に問題あり 人選も不適切
「闇営業・反社会的勢力」問題に端を発し、吉本興業の体質が問われている中、その問題を報じる民放のワイドショーや情報番組の姿勢もまた問われている。既に世間の関心は吉本のガバナンスや芸人の待遇面にまで拡大しているのに、まるで問題の矮小化を狙っているような発言者もいる。人選は適切か?
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端緒こそ、宮迫博之(49)や田村亮(47)らの闇営業問題と反社会的勢力との関係だったが、今や吉本という組織全体の体質が問われている。
吉本が所属芸人との間に契約書を交わしていなかった件について、公正取引委員会の山田昭典事務総長は7月24日、「契約書面が存在しないということは、競争政策の観点から問題がある」と発言した。
これを受け吉本は翌25日、一転して希望する芸人には書面で契約する方針を固めた。
柴山昌彦文部科学相は7月23日の閣議後の記者会見で、「文化の健全な振興という観点からも、組織におけるガバナンス、コンプライアンスが極めて重要」と意見した。やはり問題は闇営業だけではなくなっている。
まして吉本の関係事業には、官民ファンド「海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)」から最大100億円の資金が拠出される。血税が使われるのだ。吉本問題に世間の耳目が集まるのは、不思議なことではないだろう。
ところが、それを伝えるワイドショーや情報番組の発言者の意見が偏っているため、核心部分や論点が見えにくくなっている。
多様な意見が飛び交うのはいいことだろうが、利害当事者と目される人も登場しているため、「単なる世論誘導になっていのではないか」(全国紙・社会部記者)と勘繰る声すら上がり始めているのだ。
たとえば、「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日系列)などに登場している吉本興業社員OGの大谷由里子さん(56)である。
今は人材育成のための研修・講演などの活動を行っている人なので、各番組は大谷さんを「第三者」と判断したのだろう。だが、その発言は吉本寄りに聞こえ、芸人たちには厳しい。
7月23日、「モーニングショー」に登場した際には、「テープ回しとらんやろな」などの岡本昭彦社長(52)の言動について、「パワハラではないと思います」(大谷さん)と言い切った。労働に関する法律のプロではなく、本人たちに直接聴取をしていない人が、番組内でパワハラを否定してしまうのは勇み足ではないか。
同24日、「情報ライブ ミヤネ屋」(読売テレビ/日本テレビ系列)出演時には、若手芸人のギャラの安さを指摘されて、「劇場を維持するのにどれだけかかると思ってるんですか?」(大谷さん)と持論を展開。とはいえ、劇場維持と芸人のギャラは、直接、関係ないだろう。
同25日、「直撃LIVEグッディ!」(フジテレビ)で、大谷さんはこう語った。
「吉本は懐くと凄く優しい会社です。横山やすしさんなんてまさにそうで、何度も事件を起こしても、ちゃんと面倒見ていました」
不祥事を起こしても、会社に服従していれば、面倒を見てもらえる、ということなのか……。
乞われて出演したのだから発言は自由だろう。疑問なのは各番組の人選基準だ。慎重に行われているのか?
大谷さんは「モーニングショー」の中で、こうも語っていた。
「私、辞めた社員ですよ? 辞めた社員に対しても、ずっとお仕事くれてたのは吉本興業だし、阪神大震災のときに私ほんとにお金に困ったんです。そのときにポンと500万円貸してくれたのも吉本興業」
吉本はいい会社であることをアピールしたかったのだろうが、これでは吉本と大谷さんが利害関係にあると言えるのではないか。少なくとも吉本問題を語るのに適した第三者とは言い難いだろう。
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