阪神・近本光司「球宴サイクル」安打の過剰忖度に実況席も苦笑

スポーツ 野球

  • ブックマーク

「外野……凄いっすね」

「アシストになってますか」

 実況席を苦笑させたのは、外野の前進守備だった。

 甲子園球場で行われたオールスター第2戦。本塁打、二塁打、単打を放っていた阪神のルーキー、近本光司(24)が打席に立つと、パ・リーグ外野陣は、三塁打が出やすいように極端な前進守備を敷いた。

“忖度”のおかげで、近本の打球は、レフト秋山翔吾の頭上をオーバー。それを秋山が緩慢に追い、ボールを遊撃手・源田壮亮へ。

 だがそこで近本の足が止まった。三塁は無理なタイミングだった。ところが、源田は三塁にすぐには送球しない。またも忖度である。

 空気が読めた近本は再加速して三塁へ。クロスプレーか――と、今度は三塁手の松田宣浩が後逸。3人の“連携忖度”のおかげでめでたく“球宴サイクル”が相成ったのだった。

「古田敦也以来27年ぶり2人目の快挙と言うけど、果たして比べて良いものか」

 とスポーツ紙デスク。

「“人気のセ、実力のパ”と言われた一昔前、特にパの選手たちは、全国に名を売るチャンスだと真剣にプレーしたものだけど……」

 球宴の大記録といえば、1971年に江夏豊が樹立した9連続三振が有名だが、84年に江川卓が8連続までいったことがある。

「このとき9番目のパの打者、大石大二郎はバットを投げ出すようにして当てて二ゴロとし、記録を阻止した。今なら最後の打者はわざと三振するんだろうな」

 むろん球宴ゆえのファンサービスも大切だ。過去にもイチローがマウンドに立つなど、バラエティ番組のようなシーンは散見された。

 だが一方で“忖度サイクル”によって、何か大切なものを喪った気もするのだ。

「まあ、あの3人の野手も、ある意味でプロの“技”を見せてくれたけどね」

 と先のデスクが鼻白む。

「明らかな暴投や落球はエラーと記録され、三塁打にならない。ギリギリでエラーにならない緩慢プレー――これぞ職人技だよ」

 たかが祭り、されど祭りのオールスター。

週刊新潮 2019年7月25日号掲載

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。