かんぽ生命を「悪質詐欺集団」へと失墜させた「ノルマ地獄」の実態
不正のお手本を見せる
売り方はインストラクターの指導を仰ぐという。先の渉外社員の話に戻る。
「営業成績のいい渉外社員がインストラクターになります。各ブロックに2人いて各局を回り、社員と一緒に営業に出向いて手本を見せるのです。保険を乗り換えさせただけでは、新規契約の半分の成績にしかなりませんが、解約させて3~4カ月置けば新規契約として認められる。インストラクターがそういう“お手本”を社員に見せ、社員は局に帰って“こんなやり方をしていた”と、ほかの社員に伝える。乗り換えでは局の成績が上がらないので、部長が“上手いことできないのか”と、声を飛ばしているのも現実です」
先の別の社員も、
「インストラクターが二重払いなどのやり方をレクチャーし、“こうすれば成績が伸びる”と教える。逆にそうしないと伸びないわけで、マジメにやると“なんで成績が悪いんだ!”と上司に怒鳴られるんです」
と同様に告発する。会社の上層部がそれを知らないはずもない。郵政産業労働者ユニオン中央執行副委員長の家門和宏氏によれば、
「私たちは、懲罰的な研修や人格否定はしないように、会社側に伝えてきましたが、ずっと繰り返されているのです。“営業目標は適正です”“いじめやパワハラではなく本人への指導”“法令に従っています”というのが会社側の返答です」
さらには、高齢者が被害に遭う仕組みについて、再び渉外社員氏が語るには、
「金蔓の高齢者を回るのは、ブロックでトップクラスの成績を上げている言葉巧みな社員。部長はその社員が動きやすいように、下に手足になる社員を4、5人つけ、班を作らせます。ですから、詐欺のような手口が嫌でも、各社員は業務命令に従って班として動くしかなく、やむなく“詐欺”に加担してしまう。もちろん部長は、トップクラスの社員の手口を知っていますが、局の目標を達成するために黙認しています」
(2)へつづく
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