かんぽ生命を「悪質詐欺集団」へと失墜させた「ノルマ地獄」の実態
お役所仕事の「かんぽ生命」をノルマ地獄に変えた「住友イズム」(1/2)
日本郵政グループは、自薦の言葉によれば「トータル生活サポート企業」なのだそうだ。顧客の一生をトータルで支えるという主旨だが、どう支えていたかと言えば、こうである。
「かんぽ生命の保険の乗り換えの際、元の保険を解約したのに新契約を断られたり、新契約を結んだものの、病歴を告知しなかったとして保険金が支払われなかったり、半年以上保険料を二重に徴収されたり、4~6カ月、無保険になっていたり。こうした例が2014年以降、9万3千件あると判明したのです」
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経済部記者は呆れ顔でそう語るが、記者会見に臨んだ日本郵便の横山邦男社長は、言葉でこそ、
「営業実績を重視するあまり、お客様のライフステージ、資産状況、ニーズを踏まえて、お客様にふさわしい最善の商品をご提案するといった、本来金融事業者として最も重視しなければならない、お客様視点に立った営業活動を徹底できておりませんでした」
と問題を指摘しながら、終始、憮然とした表情。そのうえ記者から「もっと深い反省があってもいいのでは」と問われても、
「お客様本位がすべてにおいてできていなかったとは、全く思っておりません」
などと、むしろ逆切れするのだった。ちなみに、会見にはかんぽ生命の植平光彦社長も同席したが、責任を問われるべきは、やはり日本郵便だという。
「かんぽを販売する営業担当は、かんぽ生命の約千人に対し、日本郵便は約1万8千人。郵便事業の不振に悩む日本郵便にとって、かんぽ生命から支払われる年約3600億円の販売委託手数料は、まさに命綱なのです」
と、再び経済部記者。では、発表されたような不正がなぜ横行したかだが、
「超低金利が続き、主力の貯蓄型保険の魅力が薄れて、新規契約をとるのは難しい。でもノルマがあるから、既存の顧客に保険を乗り換えさせるのですが、6カ月以内に古い契約が解約されると、新規分の手当が半分にしかならない。そこで顧客には黙って古い契約を残し、7カ月経ってから解約させていた。もう一つは、先に既存の契約を解約させる方法。解約後3カ月以内に新規契約を結んでもノルマにカウントされないので、4カ月経ってから契約させていました。結果、無保険期間が生じたり、高齢者が新規の契約を結ぼうとしても、既往症のために契約できなかったり、という事例が続出したのです」(同)
かんぽ生命の契約者は2700万人近くに上る。実に、日本の人口の5分の1超で、とりわけ高齢者の比率が高い。いわば全国津々浦々の高齢者を狙った、空前の組織的詐欺の様相すら呈していて、社長が憮然としている場合ではないのは明らかである。
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