野村証券が元社員の実名出しで注意喚起! 現役社員も関与の「投資詐欺」を被害者が証言
現役社員が鵜飼いの鵜になった「野村証券」同時多発サギ(1/2)
証券界のガリバー「野村証券」が異例の発表である。顧客に詐欺を働いた元社員の実名を公表したが、そこには肝心なことが書かれていない。詐欺師の下には、複数の現役社員が鵜飼いの鵜となり関与していたというのだ。野村がひた隠しにする同時多発サギの真相とは。
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参院選でも大きな争点になっている「老後2千万円」問題。金融庁が年金に頼らない資産形成を推奨したが、何を今さら。とはいえ投資に馴染みのない人の中には、この際だからと証券会社に相談しようと思われたムキもあろう。
その株屋の中でも創業90年余り、東京は日本橋1丁目に本店を構える野村証券は、全国に156の本支店、営業所を構え、信託銀行などの関連会社を擁す野村ホールディングス(HD)の中核企業だ。そんなリーディングカンパニーが、7月2日付でこんな注意喚起を行った。
〈当社元社員による投資詐欺の疑いについて〉
と題したニュースリリースにはこう書かれている。
〈このたび、当社元社員の中村成治(なかむらせいじ)氏(2014年4月入社、姫路支店に在籍、2016年9月退職、現 株式会社Foresight(フォーサイト、東京都港区)代表取締役)が、当社退職後に、当社のお客様を含む複数の投資家に接触し、架空の投資商品を提案している疑いがあることが判明しました〉
以下、現役社員の関与は調査中とだけ記され、詐欺の手口について具体的な説明はない。日経をはじめ大手紙やテレビがこれを報じたが詳細は不明のまま。被害の拡大防止を意図した発表が、結果的には野村の顧客や投資家たちの不安を煽るだけに終わっているのだ。
「複数の現役社員がかかわっているのは明らかなのに、そのことを野村は公表しないばかりか、被害者への誠意ある対応がないのです」
と憤るのは件(くだん)の詐欺被害者の一人で、千葉県に住む50代の元会社員である。
「野村証券に口座を作ったせいで、退職金と相続した財産のすべて、およそ7300万円を根こそぎ騙し取られ、妻は鬱病になってしまいました。それもこれも野村ブランドを信用していたからなのに、担当社員やその上司、さらに社長室も取り合ってくれません」
この男性は、大手メーカーを早期退職後、老後の資産運用のためにと5年前、野村証券の船橋支店に口座を開設したと続ける。
「当初はトヨタのAA株を購入するため、私と妻の名義で店頭口座を作った。担当していた営業マンとは電話で話をするくらいで一度も会ったことが無かったのですが、昨年の10月、突然アポなしで自宅にやって来たんです。彼は『最近は新規上場や公募増資などのいい話がないので、別の案件をご紹介します』と言った後に、元野村の社員である中村成治を私たち夫婦に紹介してきました」
現役社員曰く、“中村は慶應大学出身で、野村時代は同期の中でも優秀な成績だった”とか。確かに、会ってみれば20代後半の若者だが物腰は柔らかく、怪しい雰囲気も感じない。それで投資案件に興味を示してしまったと、被害者の男性は振り返る。
「中村の説明では、元本を保証し1カ月で3%の金利を得られるとのことでした。今から考えれば脇が甘すぎたとしか言えませんが、野村の担当営業マンの紹介だからと信じてしまいました。その日と3日後に分けて計3500万円を指定された口座に振り込みました。後日、〈融資斡旋スキーム商品概要〉と銘打ったペーパーが送られてきて、読むと〈日本政策金融公庫の融資を使ったコンサルティングフィーを収益の基盤とする〉と書いてありました」
それからというもの、担当の営業マンは2カ月にわたって何度も被害者宅を訪れては追加投資を持ちかけてきた。結局、12月末までに野村で投資していたほぼ全額を「中村案件」の方につぎ込むことになってしまう。
「その時は、野村証券の社員がわざわざ自宅に来てくれ、金利だといって実際に245万円の現金を持ってきたのですっかり信用し切っていたんです。けれど、今年1月にその彼が転勤するから今後は中村と直接取引をして欲しいと連絡がきて以降、利息はおろか満期なのに元本も返されなくなった。中村の携帯にかけても通じなくなり、これはおかしいと気づいたのです」(同)
慌てた被害者は、口座を開設していた船橋支店に連絡したところ、なんと転勤したはずの担当営業マンは在籍していたことが発覚。ウソが露見した営業マンは知らぬ存ぜぬを決め込んでしまう。そこで被害男性は、中村が住む目黒のタワーマンションに押しかけて、今年2月には話し合いの場を持つことができたという。
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