「宮迫」「田村」捨て身の会見で世論もスポーツ紙も“掌返し” 吉本「情報操作」の失敗
吉本の担当者が田村亮を揶揄?
それではこの20日、日刊スポーツはどのような記事を掲載していたのだろうか。先ほど「宮迫会見拒否」との見出しをご覧いただいたが、ここでは記事本文を見てみよう。(編集部註:全角数字を半角数字に改めるなど、デイリー新潮のフォーマットに合わせた、以下同)
《事務所では前夜まで、宮迫とロンドンブーツ1号2号田村亮(47)が謝罪会見をする準備が進められていた。
ところが、宮迫と「金塊強奪事件」の主犯格との酒席を、新たに「FRIDAY」が報じることが分かった18日夜に急転した。関係者は「18日の夜に宮迫と亮が謝罪会見をするために、想定問答などの打ち合わせをする予定でしたが、宮迫がドタキャンして契約解消の道を選んで、この日の発表になった。元々は2人そろって会見する予定だったので、亮の会見もなくなりました」と説明した》
会見で日刊スポーツの記者が質問したように、記事には「謝罪会見」と書かれていた。宮迫の説明と異なっていることを確認しながら、次に進もう。
《吉本興業は闇営業が報じられる前の、5月中旬から関わった芸人たちに聞き取り調査を進めてきた。宮迫に「謝罪会見」「無期限謹慎」「契約解消」などの選択肢を提案。収まらない騒動に、最終的に「宮迫本人が契約解消しかないと思い至った」(関係者)という。吉本は、宮迫の意向を受けて、19日朝に弁護士を通じて「契約解消」を通告。宮迫も納得して受け入れた》
宮迫の主張から考えれば、《宮迫本人が契約解消しかないと思い至った》の部分もニュアンスが異なると言わざるを得ない。「引退してもいいから会見させてくれ」と思いつめたのは事実だが、そこまでに至ったのは吉本が相当の圧力をかけたからだ。
まして《弁護士を通じて「契約解消」を通告。宮迫も納得して受け入れた》については、誤報と言われても仕方がない。宮迫は全く納得していない。もちろん日刊スポーツの記事に間違いがあるのは、吉本の広報姿勢が大きな影響を与えている。
この記事には、他にも会見の内容と矛盾する記述がある。例えば《吉本は、宮迫と亮の謝罪会見を開いて、10万円以下の謝礼をもらっていた後輩芸人の復帰への道筋をつけようとしていた》という部分。吉本は謝罪会見に終始、消極的だったというのが、宮迫と田村の主張だ。
記事の後半になると、宮迫を糾弾するトーンが目立ってくる。「宮迫が会見から逃亡した」という前提で書かれているのだから仕方とはいえ、「何としてでも宮迫のせいにする」という吉本興業の思惑が透けて見える。
《反社会的勢力相手の闇営業で金銭を受け取った上に虚偽の釈明、さらに金塊強奪事件主犯格との酒席を共にしたことで宮迫は引退に追い込まれた。自業自得だが、当初から事の大きさを認識していなかったのではないか。ほとぼりが冷めれば、復帰できると考えていなかったか。
最後は復帰への第1歩となる謝罪会見の打ち合わせをドタキャン。さらし者になるのを恐れたようだ》
確かに6月24日までの宮迫は、保身の塊であり、糾弾されて当然かもしれない。だが7月に入ってからは、むしろ宮迫と田村が会見を求め、吉本サイドは時間の引き延ばしを画策していたのが実情ではなかったか。
宮迫の「ギャラはもらっていない」という嘘で、吉本興業は多大なダメージを受けたのかもしれない。だが、その後は一貫して「静観」という名の隠蔽を画策していたというのも事実だろう。
日刊スポーツの記者は会見で、田村亮にも興味深い質問を行っている。一問一答をご覧いただこう。
《ニッカン:あと亮さんなんですけども、今日、亮さんはまだ契約があるはずだと、宮迫さんと一緒にやると、吉本に確認したら「宮迫さんはもう契約が解消しているから関係ない」と、亮さんは「それなら闇会見ですね」と、「それなら契約解消になりますよ」とのことだったんですが、それを聞いてどう思いますか。
田村亮:吉本興業の判断がそうだったとしたら、そうなんではないかと、僕もその前に腹は決めているというか、淳に電話する前には決まっていたので、はい》
吉本サイドは「闇会見ですね」と揶揄する始末だったのだ。こんな事実も、白日の下にさらされた。
吉本から去った“逸材”
宮迫に責任を押し付けて乗り切る――これが吉本の基本戦略だったのだろう。だが、宮迫と田村の会見で見事に打ち砕かれた。民放キー局でバラエティ番組の制作に携わる関係者は、「吉本興業に、あの“キーマン”が不在だったことが大きいかもしれません」と首を傾げる。
「吉本興業には凄腕の広報担当者がいました。多くのメディアと平等で友好的な関係を結びながら、ここぞという時には一部の親密なメディアに狙い通りの記事を書かせる。マスコミの流れや世論を見事にコントロールしました。2011年に開かれた島田紳助さん(63)の引退会見、吉本で起きた多くの不祥事でマスコミ対応に奔走。全てを沈静化させたという伝説の人物です」
ところが、その凄腕の広報担当者は、すでに退社してしまった。これは吉本興業にとって相当な痛手になった。
「吉本興業が数々のピンチを乗り越えてきた功労者を失ったことは間違いありません。メディアを牛耳って“情報コントロール”が行えるような社員はいなくなりました。今回、宮迫さんと田村さんが会見をすると、スポーツ紙の論調ががらりと変わってしまいました。あの凄腕の担当者が吉本にいれば、これほどの“掌返し”を許しただろうかと考えてしまいます」(同・民放キー局バラエティ番組関係者)
会見で宮迫は、岡本社長が「俺にはお前ら全員クビにする力がある」と豪語したと明かした。しかし現実は、宮迫博之と田村亮という売れっ子のお笑い芸人が捨て身で挑んだ会見で世論の流れは一転し、今や世論は吉本興業への不信が渦を巻いている。
[3/3ページ]