有識者が伝授 「若返りホルモン」を増やし、病的な老化を防ぐ方法
ホルモンの親玉
同様に、加齢とともに減る「DHEA」というホルモンもある。
「ストレスに対抗する極めて重要なホルモンです」
と語る銀座上符(うわぶ)メディカルクリニックの上符正志院長に説明してもらおう。
「ストレスがかかると、対抗するためにコルチゾールというホルモンが分泌され、血糖値や血圧を上げて、体がエネルギーを出せるようにします。しかし、同時に発生する活性酸素がDNAを傷つけるため、老化につながってしまう。DHEAはコルチゾールとほぼ同時に分泌され、酸化を防いでくれるのです。このDHEAは副腎で分泌されるので、副腎が疲れてDHEAが分泌されにくくなると、慢性的な疲れ、眠れない、起きられない、記憶力や思考力の低下、性欲の低下、といった症状が出ます」
同志社大の米井教授は、
「男性ホルモンや女性ホルモンなど、ほかのホルモンに変化していきます」
と補足して説明する。
「卵巣ではエストロゲンなどの女性ホルモンが、精巣ではテストステロンという男性ホルモンが作られます。若いうちはそれでいいですが、女性は50歳ぐらいで更年期を迎えて卵巣機能が止まると、以後は女性ホルモンのほとんどはDHEAからできる。男性も精巣の機能が衰えると、DHEAから男性ホルモンが作られます。DHEAはいろんなホルモンの親玉なのです」
もう少し話を続けると、
「DHEAの99%は、化学的に安定したサルフェート型(DHEA-s)として血中に存在します。アメリカ国立老化研究所による調査で、長寿の人はインスリン値が低く、体温が低く、DHEAの濃度が高い、というデータがあります」
久留米大学医学部が27年にわたって行った追跡調査の結果もある。DHEAの血中濃度が高い男性ほど死亡率が低かったのだ。
「体の老化度を評価するときの一つの基準に、ホルモン年齢があります」
と米井教授は言い、その際目安になるのが成長ホルモン、DHEA、メラトニンの三つだと強調する。ホルモンが若さの維持にこうも関わっていたわけだ。体内に100種類以上あるというホルモンは、そもそもどんな働きをするのか。
「各器官から分泌され、血液などを通じて全身に運ばれます。それをレセプター(受容体)が受け入れ、標的になっている細胞の遺伝子の動きをコントロールする。そうやって遠隔地に情報を伝えるのがホルモンの働きです。したがって分泌量や分泌されるタイミングが大事ですが、同時に、ホルモンを全身に届ける動脈から毛細血管までのルートを健康に保つことも重要です」(根来教授)
かくなるうえは、それぞれのホルモンの特徴を知り、体内に適切に呼び寄せる必要があるだろう。
まず成長ホルモンだが、
「三つのタイミングで分泌されます。一つは筋トレをしたとき、二つ目は空腹時、三つ目が睡眠中です」
と、根来教授が続ける。
「睡眠は平均90分サイクルで深くなったり浅くなったりします。入眠後の2サイクル、約3時間で特に深くなり、その間に1日の分泌量の7割程度の成長ホルモンが出ます」
次にメラトニンだが、
「起床して視神経が光を受けると分泌がぐっと抑えられ、その15~16時間後に産出されます。そのように体内時計に従ったリズムが大事で、7時に起床する人だと、22時ごろから増えはじめ、1~2時にかなり上昇し、明け方に低下して、朝に光を浴びるとゼロになります。メラトニンの大敵は光なので、22時をすぎたらできるだけ光を浴びないように勧めています」
一方、DHEAが分泌されるタイミングははっきりしないそうだが、
「筋肉量が増えると増加することはわかっています」
と、根来教授は言う。
では、「若返りホルモン」たちを産みだし、活かすためになにをすべきか。次回で、具体的に見ていきたい。
(2)へつづく
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