バブル時代の「遠藤騒動」(中川淳一郎)
『おっさんは二度死ぬ』(pato著・扶桑社)という本を読んだところ、あまりにもバカなおっさんが多数出てきて、途中笑い過ぎてページをめくれなくなってしまいました。この本を読んで様々なバカ話を思い出してしまったので、それについて書いてみます。
新入社員時代、「社長」というあだ名の1歳上の先輩がいました。酔っ払うと先輩社員に「オラ。ビール注げ」などと言い出し、年上の社員が「社長、どうぞ!」とそのノリに応じてあげたところ、あだ名が「社長」になりました。
そんな社長が異動することになり、「オレの送別会を皆でグアムでやってもらいたい」と言います。総勢9名、グアムへ3泊4日で行くことに。そして社長が見つけてきたツアーが、4つ星ホテル泊でなんと3万9800円! 慎重な先輩方は「それ、大丈夫なの?」と心配しだしました。
すると社長は「相手は『遠藤さん』というフリーの女性旅行プランナーで、大手と太いパイプがあるからこの値段が可能なんだ」と言います。しかし、皆で振り込みを済ませ、旅行1週間前になってもチケットが送られてこない。
これは詐欺ではないか、という話になり、社長がネットで遠藤さんの評判を探ったところ、詐欺師であることが明らかになります。そこで、社長は仕事の空き時間で遠藤さんの自宅を突き止めるべく動いた。CIAもびっくりの諜報能力を駆使した社長は彼女を待ち伏せし、捕まえました。
どうも、大手旅行代理店勤務の愛人に商品を横流しさせ、何人かは本当に買えるものの、他は買えない、という話だったらしいんですよ。泣き寝入りさせるのが常套手段なのですが、社長が自宅を特定したため、遠藤さんは観念し、9人分を手配したのでした。「7万円のならある」みたいな話になったものの、社長は3万9800円を譲らず。多分、愛人は赤字になったはずです。
しかし、旅行当日、先輩の一人が「パスポートが見つからない……」と言い始めるではないですか。金曜日の夕方、皆で成田空港に行くことになっていたのですが、その先輩は一旦家に帰り、パスポートを見つけたら空港で落ち合うことに。しかし、搭乗手続きのギリギリまで見つからず。先輩は「楽しんできてくれ……。オレは行けない」と電話で言います。この先輩の名字が、なんと「遠藤」でした。
この時、我々のグループの最長老は「遠藤に始まり、遠藤に終わったな。本当に遠藤に振り回されたよ」と仰り、この「遠藤騒動」は未だに我々の間では語り草になっています。
さて、そんな「社長」ですが、「老後2千万円貯めておけ」の時代、実にサイコーな置き土産を残してくれました。当時付き合っていた彼女(現妻)が保険の営業をしていて、新入社員だった私に強引に保険を契約させようとした時、
「ハーゲンダッツ持ってきてくれるんだから、お前だけでも契約しろ」
なんて言われ、契約したのですが、コレが今考えるとすごかった。60歳まで480万円を積み立てたらなんと800万円になるという商品だったのです! 社長は「この時代、あの保険は解約するなよ」と言ってくれています。