「伊藤詩織さんvs.山口敬之記者訴訟」で明るみに出た「菅官房長官」の経済支援額

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特別な案件だから

 今月、ある日の早朝、惰眠を貪る赤坂をスーツ姿の一団がことに足早にウォーキング中だ。胸板が厚く、見るからに屈強なSP2人を引き連れた菅長官を直撃した。

――おはようございます、17年の話で恐縮なんですけど……。

「いや、もういい」

――毎月、山口敬之さんは顧問料を支払ってもらって。それは、長官が滝会長に依頼をされた……という話だったんですが。

「ちょっと、今……」

――山口敬之さんからお願いされたんですか? 顧問料を支払えというのは? どういった経緯かだけでも。

「ちょっと、悪いけど、ちょっと。私、関与してないです」

――とはいえ、その……。

「それ以上言えない。関与してない」

 それ以降は、「プライベートですから、だめ」「だから答えているじゃない」と続き、「失礼だよ、私のプライベートなんだから!」と、“24時間365日稼働”をもって鳴る菅長官には残念な“激おこ”で終わった。先の代理店関係者に改めて聞くと、

「会社の事業内容とは関係ない新潮の記事で送金を止めたということは、会社にとって山口がいかに不要な人材だったかを物語っている。つまり、どうしても断れない特別な案件だったからと考えるのが自然。繰り返しますが、山口は一度も会社に来なかったようですし、『山口顧問』の存在など、ヒラ社員は知る由もないんです」

 詩織さんへの反訴と相前後し、『ゴーマニズム宣言』で著名な漫画家の小林よしのり氏の元にも、山口記者からの訴状が届いている。「SAPIO」に掲載した作品が名誉毀損とプライバシー侵害に当たるという主張である。

「レイプに関する裁判は、実情が不透明なものが少なくありません。しかし、この伊藤詩織さんの事案が特別なのは、捜査の過程で権力が介入した可能性があるという点です」

 とは、小林氏ご当人。

「女性の人権が蹂躙された事件で権力が介入していたとしたら、これほど恐ろしいことはありません。逮捕状が出ていたのに、それが執行されなかったのは、やはり不自然。そういう捜査の結果として、刑事事件は不起訴という処分になり、検察審査会が不起訴相当を決めた可能性も否定できない。重大な案件なんです」

 詩織さんが名乗り出て闘っていることについて、

「非常に勇気がいることだと思います。この国では、レイプを告発すること自体、大変な困難を伴う。というのも、女性の服装がどうのこうのとか、あたかも女性に落ち度があるかのように言われてしまうことがしばしばだから。そういう、男尊女卑的な傾向が依然として根強い社会で、女性が声をあげるというのは大変なことなんです。そのうえ、権力が絡んでいる可能性があるわけですから。伊藤さんの行動は、日本の国家、民主主義のためにとても意義があることだと思います。だからこそ、わしは応援したいと思っているんです」

 お上の裁きは年明けまでには下る模様である。

週刊新潮 2019年7月18日号掲載

特集「『準強姦逮捕状』が握り潰され4年……『伊藤詩織さん』vs.『安倍官邸ベッタリ記者』の法廷対決」より

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