参院選で「れいわ」を応援、脳科学者・茂木健一郎氏が語る“山本太郎という男”

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選挙は失敗する?

――ステージから見て、会場はどんな感じでしたか?

茂木:僕はこれまでいろんな選挙の現場を見てきていますが、れいわの会場は“動員感”がなかったですね。自発的に来ている方が多いように感じました。音楽のフェスに似ているような、SUGIZOさんが来ているということもあるのかもしれないけど、独特の雰囲気がありました。意外に年齢層もバラバラでした。品川で夕方ということもあるのかもしれないけど、ビジネスパーソンで帰宅途中の方もいましたし、若い方もお年寄りも万遍なくいたように思います。着ている服もバラバラで、とにかく共通点が見当たらない。

――呼びかけに答える声は、若い人が目立つように感じたが?

茂木:そこはライブ会場と一緒で、お年寄りはそういうノリに慣れていないということじゃないですか。SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動)の国会デモの時のような、学生中心という感じではなかった。もちろんリベラルの人もいるんだけど、背景の見えない人が、結構、多い感じがしました。山本さんは、「政策を実現するためなら自民党とだって組みますよ」と言うくらいの人だから、来ている人も保守でも革新でもない感じですね。日本の政治運動史上、れいわ新選組というのは、ちょっと異質な存在だという気がします。組織がなくて、小っちゃい本部にボランティアがいて、というだけのね。

――前回(13年)の参院選では東京都選挙区だった山本氏は、今回は比例代表に回った。しかも、今回から導入された「特定候補者」に別の2名を入れたため、彼の当選は3番目となる。だから茂木氏は応援演説で「今回、正直、(山本氏は)比例の3位。この作戦、失敗したと思ってます?」「350万(票)取らないとダメなんでしょ?」と、山本氏に質している。

茂木:そうです。私の知り合いに選挙のプロがいるんですが、その人は、「山本さんは東京都選挙区にいたままで、比例には別の人を立てたほうが、議席は増やせたのに」と言っていました。でも、面白かったのは候補者選定でした。まだ蓮池透さんしか決まっていない頃でしたが、どういう人がいいのかという話し合いをしていたんだけど、彼は「現場の方」って仰っていたんですよね。そこからセブン-イレブンの店長の方とか、障害者の方に決まっていった。組織とか、当選しやすいビッグネーム、元議員であるとか、既存の政党がこれまでやってきた候補者選びを、すべて否定するところから始めたのではないか。もちろん、報じられているように、それが実際に通用するのかわかりませんが。

――東京選挙区では、本来なら公明党から出馬すべき創価学会員を、れいわ新選組から立候補させ、公明党代表の山口那津男氏にぶつけるという、なんだかプロレスのようなこともやっている。

茂木:ああいうことをするって、今までなかったからなあ。

――れいわ新選組は、消費税廃止、奨学金チャラ、最低賃金1500円(政府が補償)……など、実現性の低い公約を掲げている。これをどう思うか?

茂木:正直言って、難しいでしょう。特に消費税ゼロとか……。でも、政治は「可能性の芸術」と言ったのはビスマルクですが、それでいいと思うんですよ。僕は「公約は契約ではない」と思っていて、それは有権者もわかっているんじゃないかと思います。自民党も含めて、「選挙ってそういうもんじゃない?」なんて、みんな思っているんじゃないですか。

――いいのか?それで。

茂木:でも、今日もある経営者と話していて、「やっぱりお金持っている人は甘やかされている」という話をされていました。そういう政治状況を一番わかりやすく伝える政策が、“消費税ゼロ”といった公約なんでしょう。コミュニケーションとしては有効なんじゃないでしょうか。山本さんの街頭演説は、即興でやっているそうなんですよ。国会での質問は、尺が短いから演技だそうです。どちらも上手い。僕はいろんな人の応援に行くから、よくわかるんだけど、彼は上手い。そのタレント性は、すごいものがあります。

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