日本の「カワウソ」ブームに警鐘を鳴らす英国人 1匹100万円で売買の裏に反社会勢力?

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拍車をかけるソーシャル・メディア人気

 NGO「World Animal Protection」の最新報告書からも、密猟されたカワウソがいかに酷い環境で飼われるかがよく分かる。そのいくつかをご紹介しよう。

《インドネシアでは、時として、赤ちゃんカワウソを捕獲するために、犬を使って巣を探し出して、親を殺す、巣に放火して炙り出す、電気ショックをかけて気絶させる、もしくは射殺するなどの方法が取られている》

《インドネシアではまた、警察や政府関係者がカワウソ輸出を手伝う上で(※現地ではこうした行為が横行しているという)、匂いを消すために、「腺を取り出す手術」に関与している。よりペットとして魅力的に改造するためである》

《(飼育されるカワウソの)生態系や背景について、飼い主の47%がほとんど調べない、もしくはまったく調べないで購入している》

 Instagramでカワウソを飼う女性に取材したとグランディ氏も述べていたが、人気に拍車をかけるSNSの罪も大きい。インドネシアでは、カワウソ売買専用のFacebookページ があり4万3000人が登録している。タイでは、Facebookにカワウソの写真を掲載するユーザーが、2016年の10万6000人から2018年には20万3445人と、2倍になったというデータもある。

 日本ではどうだろうか? 先の報告書には、

《日本にいるカワウソの数は、正式な形で輸入されたカワウソの個体数よりはるかに多い。輸入に関して、文書偽造が監査を通り抜けるために使われている》

 とある。英国の動物団体がこの点をペットショップやカワウソ・カフェに質すと、「日本産の個体だ」との答えが返ってきたそうだが、本当だろうか? 一夫一妻のカワウソの繁殖は大変難しく、繁殖に成功する確率がとても低い。そう簡単に需要にあわせた供給はできないと、ブリーダーらの間では有名だ。

 最後に、「World~」代表でキャンペーンプロジェクト総代表のカッサンドラ・コエネン(Cassandra Koenen)氏の警告を紹介したい。

《野生動物が可愛いいからといって、それを理由に家に持って帰ってはいけない。残念ながら、野生動物を「かっこいい」ペットとして紹介しているソーシャル・メディア、インフルエンサー、セレブらがいる。彼らの影響によって、皆、そうした意識の共有を忘れているようだ〉

 You TubeやFacebookでたまたま見かけた可愛いカワウソに「いいね!」する前に、ちょっと考えてみよう。そのカワウソの両親は、いまどこにいるのかということを。

瀬川牧子/ジャーナリスト

週刊新潮WEB取材班編集

2019年7月17日掲載

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