中国人経営の不動産屋は法律を守る気がない 日本人の元従業員が語る“ブラックな実態”

国内 社会

  • ブックマーク

いいとこどりの中国人社長

 それにしてもどうかと思うのは、「社員」と呼ばれる営業マンが完全歩合制で働いていて、保障給がないにもかかわらず、週休2日制で朝9時から夕方6時までのフルタイム勤務をしていること。働く側の完全歩合制のメリットは、基本、出社の必要がなく1日の時間は自分の裁量で使える、直行・直帰OK、副業OK、ノルマなし、扱い金額の大きい案件が成立すれば高額報酬も夢ではない、ということ。デメリットは、成約がなければ報酬ゼロ……。この会社の場合、勤怠はタイムカードで管理されているし、無断欠勤と遅刻には罰金もあります。毎月売上目標を一人ずつ設定し、目標が達成できなければ、その理由と解決方法を皆の前で発表させられていましたね。
 
 どうしても契約が取れなかったり、成約ゼロの月が数カ月続いた営業マンもいましたよ。一度、社長に聞いたことがあるんです。「客を捕まえられない営業はどうやって生活しているんだ」って。そうしたら「知らない」って言っていましたね。完全歩合制なのだから努力が成果を結ぶといわれれば、決められた就労時間外も努力しなければならない。しかし、フルタイム勤務で日中の時間が拘束されていて自由が利かない分、副業で生活費を稼ぐのは夜しかない。そして、朝がくれば定時の出社……袋小路ですね。フルタイム勤務なのに会社は社保に加入しない。完全歩合制の彼らは国保と年金の支払いがあって、お金がなくて納められないでいると、今後は査証の更新にも影響するようです。なんか、金儲けと支出抑制のために、完全歩合制とフルタイム勤務の両方から社長に都合のいいところだけ抜粋した就労条件に思えるのは、私だけでしょうか。

 それよりなにより、このような就労条件で査証の申請は通るのでしょうか? それにこの会社の場合、何を以て社員とするのかがまず不明。最初はバイトとして入社するのか、入社後3カ月連続して月間の売上が50万円に達したら、査証を保証してもらえるようです。査証が発給されたらそれが双方の関係の継続性を示し、(正規)社員という解釈になるのか? 用語の使い方の適正不適正は置いておいても、査証を保証してもらうのだから、営業マンはたとえ不利な条件で働かされても、文句はいえないですよ。さらに社員という言葉を使って結びつきを強調する? 結局、そこかな。査証を保証してあげるんだから、私のいう通り働いてね、と。ただ、売上目標を達成できなくても、査証を保証して“あげようか”と持ち掛けられたコもいました。もちろん有償でですよ。

 完全歩合制は、日本人社会でも経営側に都合のいい制度ですよね。日本人が経営する不動産会社でも完全歩合制を導入しているところはありますが、ただ、さすがにそこまで時間と場所を拘束したり、一方的に結果を要求したりしませんよ。

 この中国人社長の場合は、よっぽど業績に納得いかないとか、天井知らずの強欲者だとか――営業マンが稼いでくれなければ、一蓮托生で自分の上りが出ませんから、拘束しないと気が休まらないのかもしれません。だから、営業マンがほかの不動産会社に客を連れていかないよう、負担を減らす心遣いも大変なもの。そのしわ寄せは宅建士に来ます。客を横流ししたら法的措置を採るらしいですよ。従業員は奴隷じゃないんですから。どんな契約をしているか知りませんが、訴えたら逆に墓穴を掘ることになるんじゃないの、って思います。

次ページ:すべて査証のため

前へ 1 2 3 次へ

[2/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。