カサンドラ妻が発達障害夫との離婚を決意した「恐怖の一夜」
「カサンドラ症候群」(以下、カサンドラ)とは、発達障害の一種「アスペルガー症候群」(以下、アスペルガー)の夫や妻、あるいはパートナーとのコミュニケーションが上手くいかないことによって発生する心身の不調です。特に夫婦関係で多く起こると言われていますが、最近ではアスペルガーの家族や職場・友人関係などを持つ人に幅広く起こり得ることが知られています。本連載「私ってカサンドラ!?」では、カサンドラに陥ったアラフォー女性ライターが、自らの体験や当事者や医療関係者等への取材を通して、知られざるカサンドラの実態と病理を解き明かします。
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日常を侵食する「世にも奇妙な物語」
「白黒つけてやる!」
一度は気持ちを奮い立たせたものの、実際そのためにできることはほとんどなかった。その頃には本もろくに読めなくなっていたため、情報収集が捗らなかったからだ。
読書が大好きで幼い頃から暇さえあれば本を読み、趣味が高じて書く仕事についたこの私が、まさか本が読めなくなるなんて。それを自覚したのは最近、また少しずつ本が読めるように回復しはじめてからのことなので、当時、いくら本を開いても目が滑って言葉が頭に入ってこず、何回同じところを読んでも意味がつかめず、登場人物の名前も状況も全く覚えられないことを不思議に思いながらも、その日の体調が優れないせいにしてやり過ごしていた。
漫画やネットニュース、Twitter、2ちゃんねるや発言小町などの掲示板等の短くて簡単な文章は以前と変わらず問題なく読めたので、私は主に2ちゃんねるの「旦那が発達障害かも!?な奥様」のスレッドをひたすら眺めていた。
当時は、精神疾患の診断基準であるDSM-5が導入される直前で、アスペルガーの人はそうではない人とまるっきり異なるかのようなイメージが先行していた。またネット上では、空気が読めずこだわりが強いというイメージのアスペルガーと、忘れ物が多く片付けられないというイメージのADHD(注意欠陥・多動性障害)は別ものとして扱われることが多かった。
さらにアスペルガーもADHDももっと細かく分類されるのが主流だったと記憶している。
アスペルガーの分類は5つあった。
社会に馴染まない「孤立型」。
自分からは働きかけず受け身で社会生活を送る「受動型」。
積極的に社会に関わっていくが、関わり方が変わっている……例えば自分の興味のあることだけをずっと話し続けるような「積極奇異型」。
「孤立型」の類型で、自分で決めたルールにそぐわない人に他罰的に接する「尊大型」と自罰的な「大仰型」である。
またADHDは司馬理英子医師が提唱した、「のび太型」と「ジャイアン型」の分類が有名だった。
ぼーっとしていて何をすればいいのかわからなくなり、困ると人のせいにしてすぐ泣くのび太と、後先考えたり我慢したりといったことができず衝動のままに行動し、欲求が叶わなければ怒って暴れるジャイアンだ。
ところが夫の特徴は、積極奇異型や尊大型、あるいはジャイアン型のようでもあり、どれか1つにバッチリ当てはまるというわけではなかった。
一方、「世にも奇妙な物語」が猛スピードで私を侵食しはじめていた。病院だけじゃない。レストランに行けば注文と違うメニューが出てくるし、タクシーは止まってくれない。それどころか歩いているだけなのに知らないおじさんに怒鳴られ、家に帰れば夫に詰め寄られる。
そんな毎日の連続なので、自分のやることなすことに自信が持てず、他の人に何か少し言われただけでも自身を否定されたように感じてパニックを起こすようになった。今までは夫と喧嘩になった時だけだったのに、普段の生活でもストレスを感じると呼吸が浅くなり、脈が増え、指先が冷たくなって熱が出る。夜になると38度近くまで熱が上がって寝込むようなことが続き、元気な日は月に半分もない。
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