広島「緒方監督」の死角、絶対王者転落の一因は問題だらけの“選手起用法”

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 交流戦最下位からチーム20年ぶりの11連敗と悪夢が冷めないまま、前半戦を終えた広島カープ。球団初のリーグ3連覇を達成した緒方孝市監督にとっても、試練の後半戦となりそうだ。

 現役時代から口数が少なく、黙々とプレーするタイプで、同じ九州出身の前田智徳とともに報道陣泣かせの気質だった緒方監督だが、球団史上初となるリーグ4連覇のかかった今季は、その「取っつきにくさ」に、さらに拍車がかかっている。誤解を恐れずに言えば、神経質になりすぎているようにも見える。

 その根拠のひとつと言えそうなのが、今年の緒方監督が「監督5年目」ということだ。リーグ初優勝を果たした1975年以降、カープの監督で5年以上の任期を務めたのはリーグ優勝4回、日本一3回の実績で「名将」と呼ばれた古葉竹識氏、一人だけ。91年にリーグ優勝を果たした山本浩二氏は、二度の監督就任で合計10年間、監督を務めているが、いずれも5年ずつで任期を終えている。前監督の野村謙二郎氏も、チーム16年ぶりのAクラスから2年連続でCS進出を果たし、リーグ優勝も間近と言われたチームを作り上げたが、5年の任期を終えると、緒方監督にその座を譲った。

 球団も5年単位でのチーム作りを明言しており、その方針はフロントから現場まで浸透している。近年の躍進は、その試みが結実したものであることは間違いない。球団史上初のリーグ3連覇を達成した緒方監督は、6年目以降の指揮も確実と思われていたが、今季の余裕が感じられない言動や采配を見ると、この「監督5年目」という立場が、少なからず影響しているようにも思える。

 今季はリーグ3連覇中に不動の1番打者だった田中広輔が、極度の打撃不振で打率1割台と低迷が続いている。同じく守護神として君臨していた中﨑翔太も防御率4点台と不安定な内容で、セーブ数は29試合でわずか8と、勝ちゲームを何試合も落とす要因となった。

 中﨑は6月20日に登録抹消となり、現在は二軍調整中だが、田中広は前半戦終了時までスタメン起用が続いている。田中広も中﨑が抹消となった同時期にスタメンの座をドラフト1位ルーキーの小園海斗に譲り、球団記録に迫っていた連続フルイニング出場と連続試合出場が途切れた。しかし、小園に守備の不安が露呈し、わずか4試合の出場で再び二軍落ちとなり、現在は何事もなかったようにショートは田中広で不動の状況だ。

 この2人に象徴されるように、緒方監督はリーグ3連覇に貢献した選手を重用する傾向が強い。今季は巨人にFA移籍した丸佳浩の補償選手として長野久義を獲得したが、オープン戦から結果を残せず、代打や左投手相手のスタメンなど限定的な起用が続き、7月2日に二軍降格となった。同じような成績の松山竜平は、頭部死球の影響などで二軍調整もあったが、打率1割台でも、現在も一軍でプレーしている。状態や左右の違いなどの事情はあるにせよ、緒方監督がどちらを重用しているかは明らかだ。

 競争主義を徹底する姿勢として、また心情的にも、こうした選手の起用法は間違っていないのかもしれない。ただ、過去のFAでは若手の有望選手を獲得していた広島が、大物FA選手にも匹敵する実績を持つ長野を獲得した意味は何だったのか。巨人には力のある若手投手が左右を問わず豊富にいる。目に見える結果を残せなかった長野にも責任があるのはもちろんだが、首位打者経験もあり、昨季も116試合に出場して打率.290の成績を残している選手に対して、開幕からのこの起用法には、疑問を抱かざるを得ない。

 この「選手を信頼する起用法」を貫き通す姿勢は、勝っている間はブレない、一貫した指導者のカガミと評価されるが、結果が出なければ「融通の効かない、同じことしかできない」という批判に変わってしまう。過去3年、ポストシーズンでことごとく敗れ去った際には、それが顕著となった。

 初の大舞台となった北海道日本ハムとの日本シリーズでは栗山英樹監督、まさかのCS敗退となった17年はアレックス・ラミレス監督、そして昨年の福岡ソフトバンクとの最終決戦では工藤公康監督との「短期決戦での采配の差」が敗因に挙げられた。

 緒方監督が3年間、貫き通したのが「シーズンと変わらない、普段通りの戦い方」で、投手の継投に関しても16年には勝ちパターンの継投を続け、ジャクソンが6連投という異常事態になった。そのジャクソンが第6戦に満塁弾を浴び、日本一への夢が断たれたシーンが、その年の日本シリーズを象徴していた。昨年も「甲斐キャノン」と話題になった相手に盗塁を仕掛け続けたが、6連続盗塁阻止とシリーズタイ記録を樹立され、なすすべなくチームは敗れ去った。シーズン中、チームが不振の時期に「また明日、切り替えてやる」と呪文のように続けた姿勢では、短期間での「流れ」に対応することができなかった。

 緒方監督には、これまでの4年間、共に戦って結果を残してきた選手と4連覇を達成したいという気持ちが強かったのだろう。それが監督5年目、もしかしたら自身最後のシーズンになるかもしれないとすれば、なおさらだ。ただ、そんな監督のセンチメンタルで融通の効かない姿勢が、現在の窮状につながっていることは間違いなさそうだ。

週刊新潮WEB取材班

2019年7月14日掲載

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