「GACKT」宣伝の甘熟王バナナ、フィリピン工場は労働者が殺害される劣悪な環境

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住友商事は株を売却

「甘熟王」というブランド名や「スミフル」という会社名をご存知の方は、相当なバナナ好きかもしれない。もしくはGACKT(45)の大ファンだろうか?

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 住友商事の公式サイトに「主要グループ各社」のページがある。ここに「SUMIFRU SINGAPORE PTE.LTD」の社名が表示されている。事業内容は《バナナ等の生鮮青果物の販売(日本・海外)、グループ会社(フィリピン農園・港湾・海外DISTRIBUTOR等)向けファイナンス・株式保有、グループ業績管理等》という具合だ。

 インターネットのサーチエンジンに「SUMIFRU」ではなく「スミフル」とカタカタで入力すると、「バナナはスミフル - Sumifru -」というサイトが上位に検索される。クリックすれば、「バナナはスミフル 国内販売量No.1」というコピーと共に、GACKTの顔写真が表示される。

 日本食糧新聞は昨年2018年5月21日、「スミフルジャパン、『甘熟王GP』好調 販促と良食味、倍増狙う」の記事を掲載した。重要なポイントを引用させていただく。

《青果物輸入販社、スミフルジャパンの最高級バナナ「甘熟王ゴールドプレミアム(GP)」の販売が好調だ。GACKTをイメージキャラクターに起用した施策などの効果と食味の良さにより、今年度の販売量は前年比200%を目指している》

《「甘熟王GP」は、同社が展開する甘熟王ブランドの中でも最高級品で、1万人のフードアナリストが選考する「ジャパン・フード・セレクション」ではグランプリを連続受賞した。今年3月、インパクトと「食」へのこだわりが強いGACKTを起用。プレミアム系バナナの主な購買層である50代以上だけでなく、若年層も含め、幅広い世代へ甘熟王GPの浸透を図るため、SNSなどを活用した施策も講じ、販売は好調だ》

《生産を担うスミフル・フィリピン社は、味の追求だけでなく、環境負荷低減を推進。トラクターや発電機のエンジン燃焼効率を向上させ、CO2排出量の大幅低減を達成し、ISO14064-2認証を取得した》

 GACKTが「甘熟王ゴールドプレミアム」のイメージキャラクターに就任したのは18年3月。スミフルジャパンと彼にとっては、文字通り「Win-Win」な関係だっただろう。何しろ環境に配慮した、良質のバナナだ。売るほうも宣伝するほうも、さぞかしやり甲斐を感じていたに違いない。

 ところが、それが今年6月になると、状況が一変する。ここで2本の新聞記事をご紹介する。日付に注目をお願いしたい。まずは朝日新聞が6月21日(電子版)に掲載した「『甘熟王』のバナナ農園 元労働者らが人権侵害を訴える」だ。

《住友商事系列だったスミフル・フィリピン社のフィリピン・ミンダナオ島のバナナ農園の元労働者2人がこのほど来日して、農園の劣悪な労働環境や一部の労働者らに対する人権侵害について訴え、支援を求めた。住友商事は「適切に対応していると報告を受けている」としている。

 スミフルは「甘熟王」ブランドのバナナを生産し、日本に輸出している。ミンダナオ島はその拠点の一つ。2人は、農園や梱包(こんぽう)工場の元労働者で、18日、東京都内で記者会見した。法的に正規雇用が認められるのに、5年働いても短期雇用契約のまま▽病気休暇や有給休暇、出産休暇がない▽1日に16時間働かされることもある、などと訴えた》

 更に日本経済新聞が同じ6月18日(電子版)に掲載した「住商 フィリピンのバナナ生産から撤退 株式売却へ」をご覧いただこう。

《住友商事は18日、フィリピンでバナナを生産するスミフル・シンガポールの保有株式を全て合弁相手に売却すると発表した。同社は日本市場の3割のバナナ輸入を手掛けており、同社のバナナは「甘熟王」のブランド名で国内スーパーで販売されている。売却額は非開示で、9月までに売却を完了する予定》

 スミフル・フィリピン社の元労働者が6月18日に会見を開き、いかに劣悪な労働環境かを訴えた。同じ日に住友商事がスミフル・シンガポールの保有株式を全て売却すると発表した。日経の記事は末尾に、

《18日にはスミフルのフィリピンの農場の関係者が過酷な労働環境の改善を求める記者会見を東京都内で開いたが、住商は「株式の売却とは関係ない」としている》

 と記述したが、この住商の説明に納得する人は、どれくらいだろうか?

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