日本に「怪しい国」認定された韓国 文在寅は「受けて立つ」というが、保守派は猛反発

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1人相撲でこける

――1人相撲ですね。

鈴置: その通りです。韓国では「自動車や化学など、半導体以外の産業も報復の被害を受ける」と騒ぎになっています。

 東亜日報は「政府、日本の追加規制に備え車と化学もチェック」(7月6日、日本語版)で韓国政府が身構えている様を報じています。

 他人の国のことながら、如何なものかと首を傾げます。あれだけ日本から「対抗措置」のサインが出ていたのに「あり得ない」と無視していた。いざ、それが現実のものとなったら今度は国をあげての大騒ぎ。

 ことに、金融の世界では大騒ぎすること自体が問題を引き起こします。「日本が貸し剥がすのではないか」と韓国人が大騒ぎするほどに、世界の金融機関が不安になって韓国から貸し剥がすからです。

 1997年も2008年も、韓国の政府とメディアは不正確な情報を流し墓穴を掘りました。今回もだんだん、似たパターンになってきました。

 金融市場の安定を目的に設置された金融委員会の崔鍾球(チェ・ジョング)委員長が7月5日、記者団と懇談しました。そこで次のように語りました。

・日本が金融部門で報復措置を取るすべての可能性を点検した。最悪の状況は新規貸付と満期延長を中断することだが、そうなったとしても対処に大きな困難はないとみている。
・2008年の金融危機当時とは違い韓国経済は安定している。日本が資金を貸さなくてもいくらでも違うところから借りられる。

「寝た子」を起こす政府発表

「大丈夫だ!」と言いたくなる気持ちは分かります。でも、それは「寝た子を起こしかねない」のです。

 実際、この発言を報じた韓国経済新聞「韓国金融委員長『日本が金融報復しても影響ない』…しかし海外工場の資金途絶えれば打撃」(7月8日、日本語版)はこう書きました。

・だが金融市場は緊張モードだ。日本の大手銀行が資金を回収する兆しが現れており、韓国企業の海外法人をターゲットにするかも知れないといううわさも出回り始めた。不吉な影が少しずつ差しているという診断だ。

 7月8日のソウル金融市場でウォンは売られ、前日比11・60ウォン安の1182・00で引けました。韓国政府の防衛ラインと見なされる1200に迫ったのです。

 株式も軟調で、時価総額の20%を占めるサムスン電子の終値は前日と比べ1150ウォン安い(2・52%安)44500ウォン。KOSPI(韓国総合株価指数)も2・10%下げて2066・25で終わりました。

 ただでさえ韓国経済はおかしくなっています(「蟻地獄に堕ちた韓国経済、『日本と通貨スワップを結ぼう』と言い出したご都合主義」参照)。そんな時に始まった日本との経済戦争は、韓国を奈落の底に突き落としかねないのです。

鈴置高史(すずおき・たかぶみ)
韓国観察者。1954年(昭和29年)愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日本経済新聞社でソウル、香港特派員、経済解説部長などを歴任。95〜96年にハーバード大学国際問題研究所で研究員、2006年にイースト・ウエスト・センター(ハワイ)でジェファーソン・プログラム・フェローを務める。18年3月に退社。著書に『米韓同盟消滅』(新潮新書)、近未来小説『朝鮮半島201Z年』(日本経済新聞出版社)など。2002年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

週刊新潮WEB取材班編集

2019年7月9日掲載

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