経産省エリート官僚の出世レース脱落を招いた「ワンクリック」

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“人たらしの天才”

 公取は国税などと並び、マスコミに対してサービスゼロのお役所として知られる。また、出身の経産省もここ数年、各部屋に鍵をかけてマスコミとの接触を制限するなど、情報の取り扱いにはナーバスだ。

 かような状況で、堂々省内メールを使用とは“脇が甘い”としか言いようがないが、その彼の名を、平塚敦之(のぶゆき)という。

 東大法学部出身で、1992年に当時の通産省に入省したアラフィフ。以来、中小企業庁や国際経済課で課長補佐を務めるなど、国内外の分野で幅広く活躍してきた。ハーバード大、コロンビア大の大学院に留学経験もある一方で、戦時下のイラクに派遣され、命からがら帰国したことも。

「“エリート臭”のまったくしない人なんです」

 と言うのは、経産省の後輩職員である。

「大学時代は応援部所属。ノリは体育会系で、ビール、焼酎、ワインと恐ろしく酒が強い。マスコミとの付き合いも広く、ある週刊誌では“霞が関7人の天才”の一人に挙げられ、“人たらしの天才”“天性の調整役”と紹介されていましたね。そんな人だから、省内でも人気があったのですが……」

 とんだ失態。目指していたはずの「次官」への道からも脱落してしまったというワケなのだ。

 そんな平塚氏の携帯に連絡すると、「情報の取り扱いについて省内から指摘はありましたが……」と述べつつ、「ノーコメント」を貫くのである。

 東大法学部→経産省で先輩に当たる、元官僚の古賀茂明氏はこう見立てる。

「今回の件がどれくらいマイナスになるかは、マスコミの騒ぎ方に加えて、大臣がどれだけ怒るかにかかっていると思います。ただ、彼の経歴を見ると、次官はさておき、局長級のポストに就くことは夢ではなかったはずですが……」

 ワンクリックでの暗転。平塚氏にとってこの夏は、記録的な冷夏になりそうだ。

週刊新潮 2019年7月4日号掲載

ワイド特集「『家族ゲーム』の人物点検」より

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