広島4連覇危うし 観客動員数は好調でも、消えたマツダスタジアムの“神通力”

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 大本命がまさかの苦戦だ。昨年、球団初のリーグ3連覇を達成し、今季も優勝候補の筆頭格に挙げられていた広島が、6月終了時点で首位の巨人に3ゲーム差の2位に甘んじている。

 今季の広島は、2年連続セ・リーグMVPの丸佳浩が巨人にFA移籍し、精神的支柱だった新井貴浩の現役引退もあり、戦力低下を心配する声もあった。それでも開幕直後の出遅れから、5月は20勝4敗1分と驚異的な勝率で首位に立ち、そのまま独走態勢に入ると思われた。しかし、チームが苦手としている交流戦で12球団最下位となる5勝12敗1分と大失速。リーグ戦でも2位に転落と、昨年までとは異なる展開となっている。

 丸不在による得点力の低下や、野村祐輔など先発陣の不振などが苦戦の要因として挙げられるが、データ的に昨年までと大きく違うのが、ホームゲームでの勝率だ。

 リーグ3連覇中、広島のホームゲームの成績は、

2016年 51勝20敗1分(勝率.718)
2017年 50勝20敗1分(勝率.714)
2018年 45勝25敗2分(勝率.643)

 だったのに対して、今季は6月30日現在で

2019年 20勝16敗1分(勝率.556)

 と、大きく数字を落としている。惨敗した交流戦でも、地元での6連戦で1勝5敗と、近年には見られなかった結果が目に付く。

「マツダスタジアムには魔物が住んでいる」

 相手チームからこんな声が上がるほど、そのホームアドバンテージは絶大だった。360度、真っ赤に染まったスタンドからのカープファンの声援は、相手にとって大きなプレッシャーとなっていた。リーグ優勝の最大のライバルとなるはずの巨人が2017年8月から2018年8月まで、マツダスタジアムで13連敗を喫したのがその象徴と言える。

 昨季は82勝中42勝が逆転勝ちで、リーグ3連覇中はいずれも40回以上の逆転勝利を記録し、「逆転の広島」と呼ばれた要因も、この球場の雰囲気によるところが大きい。連日超満員のスタンドが、選手のモチベーションとなっており、試合途中までリードされた展開でも、逆転を信じて最後まで応援を続けるファンの熱意が勝敗を左右した。

 今季も観客動員は好調で、3連覇中と変わらぬ盛況を見せているが、肝心の試合の方では、昨年まで何度も見られた奇跡的な逆転劇がほとんど見られなくなっている。それどころか、今季は大量リードされた試合では、球場名物となっているジェット風船を飛ばした7回裏の攻撃が終了すると、勝利を諦めて家路に着くファンも見られるようになった。

 神通力を失いつつあるマツダスタジアムで、近年は様々な問題が起こっている。マツダスタジアムの試合は、現在では12球団でも最も手に入れにくいプラチナチケットだ。

 球団史上初のリーグ3連覇とチームが好調なこともあり、年間の観客動員数は、

2016年 2,157,331人
2017年 2,177,554人
2018年 2,232,100人

 と右肩上がりで、球団経営も順風満帆といったところだが、その裏側では数々の問題点も出ている。

 近年、話題になっているのが、度を越したチケット争奪戦だ。開幕前に一斉販売されるチケットを求めて、昨年は先着順で手に入る整理券目当ての2000人以上がマツダスタジアム周辺にテント村を作り、周辺住民などから苦情が出た。今年は「チケットを購入するために必要な整理券を獲得するための抽選券」を配布する新方式を導入したが、配布当日に球団の予想を大きく上回る5万人以上の人が球場に殺到。近くの踏切では人が溢れてJRからの抗議や警察からの指導が入る事態となり、周辺道路や高速道路の大渋滞も引き起こすなど、大混乱でその異常事態は全国ニュースでも放送された。

 チケット販売でも、1人5試合までと制限している反面、枚数や金額の上限を設定していないため、転売目当てと思われる輩が窓口で札束を取り出し、長時間をかけて大量購入する姿も目撃されている。大量購入されたチケットは、インターネットや金券ショップなどで高額転売され、気軽に野球を楽しみたいファンの足は遠のくことになった。

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