不振「モスバーガー」を苦しめる構造的な問題、高級店舗も救世主にはならず?

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高級路線も厳しい未来?

 別の広報資料を見ると、15年の1405店のうち、FCは1348店。率にして95・9%と、モスバーガーはFC率が高い。

 しかもモスが1000店舗を達成したのは91年のことだ。それから28年が経過している。確かに店舗経営者が“高齢化”していても不思議はない。

「バブル景気だった頃、日本の外食産業は“数こそが力”でした。店舗数を増やし、右肩上がりの成長を続けることが経営の根幹でした。そういう時代にフランチャイズというビジネスモデルは、うってつけだったと思います」(同・千葉氏)

 加盟者募集の公告を打つと、脱サラを目指す会社員が押し寄せる。本部で研修を積んで出店に漕ぎ着ければ、それなりの収入が約束される――こうした“Win-Winの関係”が、かつての日本には存在した。

 だが近年になり、FCというビジネスモデルは急速に輝きを失いつつあるという。なぜなのだろうか。

「2000年代に入り、日本では少子高齢化が加速。外食産業は“成長の限界”に突き当たります。消費者の絶対数が減ったわけですから、右肩上がりの成長は不可能。更に消費者が要求するサービスのレベルも高くなりました。その結果、知名度の高い外食チェーンであっても、単に店をオープンするだけでは売上が伸びない、という時代になったのです」(同・千葉氏)

 とあるFCチェーンでは、加盟者を募集して研修・教育を行っても、90%は“退学”を余儀なくされるという。本部が「FC店で自立できるように」と厳しいカリキュラムを課すと、それほどの脱落者が生まれてしまうということだ。

 近年、FCチェーン展開を行っている外食産業大手は、「レベルの高い店舗経営を行い、飲食店の実情を熟知している同業他社にFCを委ねる」というケースが増えてきているという。

 具体的には「いきなり!ステーキ」や「焼肉ライク」のFCを幸楽苑が、串カツ田中のFCを愛知と東京で居酒屋やカフェを経営するDREAM ONが展開しているという具合だ。

 流通業界に詳しい記者は「これらは確かに成功例ですが、近年FC展開に着手して、店舗数の少ない状態にあるから可能だという点は重要でしょう」と言う。

「居酒屋『鳥貴族』もFC展開を行っていて、全店舗数の3分の1強が相当しますが、これは元社員などを経営者として育成した“のれん分け”の一種です。モスでも似た制度がありますが、店舗数を拡大するだけのものには至っていないようです。既存のオーナーの高齢化による閉店を押しとどめることは難しく、今後、モスの店舗網が縮小するのは不可避だと考えられます」

 そこで冒頭の「高級バーガー路線」に期待が集まるというわけだ。客数が減少するなら、客単価を上げる路線で新境地を切り開くという道が考えられる。単なる値上げは消費者の反発を招くが、高付加価値を実現するための値上げなら納得してくれる。

 モスの高級化路線は、店舗経営のセオリーに従った、極めてオーソドックスな経営判断のように見える。だが前出の千葉氏は「報道でも指摘されていますが、モスが4年前に始めた高級路線である『モスクラシック』は決して成功しているとは言えません」と指摘する。

「モスクラシックでハンバーガーをオーダーするとパティを目の前の鉄板で焼きます。手作り感の高い、良質なサービスを提供しようとしているのは間違いありません。ただ従業員には、モスバーガーより工程数が多い、複雑なオペレーションが求められています。大規模チェーン展開に向く業態ではありません」

 日本のフードサービス業は市場の縮小に直面しながら、“業態の多様化・高品質化”も求められている。看板メニューにあぐらをかいていると、あっという間に転落してしまう。サイドメニューを常に見直すなど、提供する商品のクオリティを高め続けなければならないのだから大変だ。

 FC展開をしている大手も変わらない。これからの時代、FCオーナーは、経営ノウハウに熟知するなど、真のプロフェッショナリズムが必要とされる。本部の看板頼みでは生き残れない。

 FC本部も同じだ。かつて本部にとってFCオーナーは「ロイヤリティを払ってくれるお客さま」だったが、そんな時代は過去のものになった。現在、本部とFCオーナーは経営上、お互いが仕組みとして向上するための重要な“パートナー”という位置づけだ。

 モスのFC路線は今後、どんな未来を加盟店に提示するのだろうか。それは日本の外食産業においてFCの存在意義と、改革の道筋を示す可能性がある。そのために関係者の大きな注目を集めているのだ。

週刊新潮WEB取材班

2019年7月4日掲載

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