新潟・山形地震、熊本地震等を予測した東海大教授が作成した「地下天気図」とは?
1962(昭和37)年1月、東大の科学者らが中心になって作成した「ブループリント」という文書がある。
全国に観測網を整備することによって10年後には地震予知が実現できるという内容だ。いわば、ここから我が国の地震予知の研究が始まったわけだが、以来57年、いまだに実現できていない。「地震予知は不可能」という諦観が広まるなか、新たな手法で前兆を知ることも不可能ではないと主張する研究者もいる。
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マグニチュード6・7の揺れが新潟・山形の沖合で発生したのは6月18日のこと。新潟では約9千戸が停電になり、村上市や酒田市でもケガ人が出たが、
「6月10日には、ニュースレターで地震の可能性があることを報告しています」
とは、東海大学海洋研究所(地震予知・火山津波研究部門)の長尾年恭(としやす)教授である。もちろん、ナマズが騒いだとか、変な雲が出たという類の話ではない。
長尾教授が続ける。
「過去50年以上の間に発生した日本全国の地震のデータを追跡すると、ある特徴が見られることが分かっています。それは、大地震の直前(数日~数カ月前)になると、小さな地震が少なくなる。これは、“静穏化”といって地震学者の間でも知られています」
どんなメカニズムなのか。
「“嵐の前の静けさ”という言葉がありますね。豪雨や台風の前に穏やかになる現象ですが、それが地下でも起きていると見られるのです」(同)
長尾教授のグループは、この“静穏化”に着目し、「地下天気図」の作成に着手。2016年4月の熊本地震では半年前に兆候を観測し、昨年6月に大阪で起きた震度6弱の地震も早くから異変を報告している。一方で、「新潟・山形地震」の後に起きた(6月24日)千葉県南部地震(震度4)の予兆はキャッチできなかった。地下天気図は、大きな地震を捉える際に効果を発揮するからだ。
「国は東海・南海トラフ地震に対する警戒を呼び掛けていますが、東日本大震災の際に取り残された歪(ひず)みが千葉県沖にもある。関東の方々はこれにも注意するべきです。新潟・山形沖はもう一度大きな揺れがあるかも知れません」(同)
長尾教授らは、3年前から「DuMA」というメールマガジンの配信サービスを行っている。いずれ必ずやってくる大震災に役立つ時が来るのだろうか。