若さと清さと美しさと正しさばかり求める日本で息苦しさを覚えている女性必見! キュートでクズなビッチの物語
自分の性欲に正直で、性的好奇心も旺盛。変態嗜好も強め。アメリカの元大統領の演説動画でオナニーはするし、アナルセックスも対応。とりあえず誰とでも寝る。親友の彼とも寝ちゃうが、さすがに犬は無理。
そんな最高に下品でキュートなヒロインの喪失感と罪悪感を描くドラマ「フリーバッグ」に夢中だ。今アマゾンプライムでシーズン1・2を観ることができる。
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主演・脚本は、フィービー・ウォーラー=ブリッジ。サンドラ・オー主演の名作「キリング・イヴ」の製作・脚本を手掛けた人で、私はすっかり彼女の虜(とりこ)である。女性の強(したた)かさと脆(もろ)さを表現する手法が素晴らしいから。
彼女の描く作品は、日本では観られないヒロイン像が特長。日本はゆるふわ頭で事なかれ主義の優等生女か、変人扱いで総スカンでも頑固な女か、清く正しく美しく以外に面白みのまったくない女。たいていが世間体、男、友達、会社、家族が主語で、流されっぱなし。フィービーが描く女は「不謹慎どんとこい。私は私のままで生きてゆく」という強い信念がある。主語は自分、クズ上等なのだ。
ヒロインが性的に自由というだけで絶賛しているわけではない。シーズン1は確かにセックスにまつわるエピソードが多かった。下品が嫌いな人はどうぞご退場を、という潔さすら感じた。それこそ私の大好物だ。
シーズン2ではヒロインが真剣に恋に落ちる。真剣というか、よりによって、禁欲が信仰の証でもあるカトリックの司祭(アンドリュー・スコット)が相手という皮肉。それでもヒロインが内包する罪悪感と喪失感の表現には圧倒された。打ちのめされた。ヒロインをなおさら大好きになった。
まず、このドラマの特徴を。フィービー演じる主人公に、なんと名前はない。そして彼女はカメラ目線で視聴者に話しかける。劇中、頻繁に心の声を吐露してくる。ナレーションではなく、演技に組み込まれているため、観る者をその場面に引き込む効果が抜群だ。タイトルの「フリーバッグ」は、ノミのたかった動物とか薄汚い格好の人という意味。名前のない女=フリーバッグであり、「私」でもある。
他の登場人物を。高学歴で高収入、美人で巨乳だが神経質で不幸な結婚をした姉(シアン・クリフォード)に、穏やかな父(ビル・パターソン)、その父の後妻で、開放的過ぎて無神経な女(オリヴィア・コールマン)。家族の関係性はシニカルだが、実に奥深い。
で、主人公の罪悪感とは、親友(ジェニー・レインスフォード)を結果的に死に追いやってしまったことだ。
シーズン2で登場するゲスト女優たちも、最高にカッコイイ。セックス、PMS、更年期、流産などの生理現象に対する意見を忌み嫌わず、自分を蔑(さげす)まずに述べる。若さと清さと美しさと正しさばかり求める日本で、息苦しさを覚えている女性にはぜひ観てほしい。
日本もさ、F2だのF3だのと年齢だけで雑に分けたマーケティング頼みにしてないで魂ぶつけてこいや、と。ゆるふわ女とイケメンの学芸会に興味ねえよ、と。