夫だけでなく娘も発達障害? カサンドラ妻の終わらない「世にも奇妙な物語」
癇癪をおこすスイッチが無数にある娘
また、3歳になった上の子にも手を焼いていた。
可愛い盛りのはずなのに、可愛いと思うことより困ることの方が多い。
例えば、その時住んでいたマンションから保育園まではわずか300mほどの距離だったのだが、その短い距離を私は自転車を使って送迎していた。ところが、ことあるごとに母が「子どものためにも、あなたのためにも歩きなさいよ、まあ怠けて……私なんてたくさん歩くから元気なのよ」と夫のようなことを言ってくる。悪いことをしているような気になって、じゃあ、と、徒歩で行こうとしてみるのだが、そうすると保育園に着くまでのたかが300mの間に必ず大声を出すはめになる。
上の子は途中お友達に会うと、テンションが上がって必ず走り出してしまい、そして車が通る道に突っ込んでいくからだ。産後の体では走って追いかけることもままならず、「止まりなさい」と声をかけることになる。でも普通の声じゃとまらない。怒鳴りつけてはじめてびっくりした娘が動きを止める。
3歳児を怒鳴りつけることにも、自転車での送迎にも、罪悪感が拭えない。
保育園の親子遠足に、プリキュアのおもちゃを持ってきたお母さんがいた。他の子だってプリキュアは大好きなはずなのに、うちの子だけが「ほしいほしいほしい!」と癇癪を起こして、遠足の間中ぐずり続けた。
また同じマンションのお友達と降園のタイミングが重なると、エレベーターの中でバイバイできず泣いてしまう。それで家の前までついて行き、さらに玄関の前でまた泣いた。ある日、相手のお母さんが耐えきれなくなったのか家に招き入れてくれた。すると今度はいくら遊んでも「帰らない」とこれまで一番の癇癪を起こし、翌日は、その子の家に遊びに行けないと前日よりさらに酷く泣き喚く。
どうしたって我が子の欲求を満たしてあげることができない。何をしてあげても、喜ばせられず、泣かせてしまうから途方にくれる。子どもの喜ぶ顔が見られないのに、子育てに喜びを感じることなんてできない。
そんな調子なのでママ友と子連れで会っていても楽しめなかった。そもそも常に頭が痛く眠くてだるいので会話に集中できないうえ、おしゃべりしようにも前に話したことを思い出せないのだ。盛り上がらないどころか話が噛み合わない。
さらに、相手の子の持ち物や、何をして遊ぶか、帰りのバイバイなど、お友達との時間の中には我が子が癇癪をおこすスイッチが無数にあり、なだめることなど不可能で、しかも相手があることのため落ち着くまで待ってあげることもできず、毎回、キツく叱りつけなければ事態を収拾することができない。
育児書に書いてあるような子育てなんて、なにひとつ、本当になにひとつできなかった。妻だけじゃなく、母親としても失格だと感じて、心底情けなかった。
[2/4ページ]