空気を読まない「長嶋一茂」と「石原良純」がなぜ人気? “水を差す”存在意義

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 芸能界デビューから長らく突出した存在ではなかったのに、ここ1、2年で超が付くほどの売れっ子になったのが、長嶋一茂(53)と石原良純(57)。その顔をテレビの画面で見ない日がないほど。2人が急ブレイクした理由を解き明かす。

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「長嶋一茂さんと石原良純さんはテレビに出ずっぱりですが、それは今の視聴者が2人を求めているからにほかなりません」(元TBSドラマプロデューサーで中央大学総合政策学部特任教授の市川哲夫氏)

 では、どうして2人は求められているのか。しかも、どちらもブレイクしたのはここ1、2年。なぜ、同時期だったのだろう? 

 よもや世間が急に五十路男に引かれ始めたわけではあるまい。2人とも「空気を読まない」が、これが時代に合ったのではないか。

 ここ数年でダイバーシティ(多様性)という言葉が浸透したものの、日本は「空気を読むことこそ正しい」という風潮が強い。職場や学校で上司や多数派の意見に抗うと、「KY」の烙印を押されたり、変わり者扱いされたりしがち。

 たぶん、集団の和を重んじる日本人の国民性のせいだろう。コンプライアンスが重視される近年は、ますます「周囲と違ってはいけない」という傾向が強まっている。

 だが、そんなことはお構いなしなのが一茂と良純。悪い奴は誰であろうが遠慮なく批判するし、世の理不尽や矛盾には「おかしい」と繰り返す。かき消されてしまいそうな少数派の意見もきちんと代弁する。なにより、正直だ。本音を口にする一方で、知ったかぶりはしない。

 簡単なことのようで、そうではないだろう。2人のマネを会社や学校でしたら、煙たがられるに違いない。正論は疎んじられるからだ。

 万人受けが求められるテレビの世界もそうだ。タレントたちにとって、空気を読まずに発言するのは怖いだろう。1回でも失言すれば視聴者から嫌われる恐れがあるし、下手をすると画面から消えてしまうのだから。

 にもかかわらず、一茂は「俺は言いたいを言う」と公言。良純の言葉からも忖度は欠片も感じられない。それが視聴者側には小気味よく、人気につながっているのではないか。

転機となった「謝んなさい」

 2人はともに「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日系)のコメンテーターを務めている。良純が月曜日の担当で、一茂は金曜日。コメンテーターとしての一茂らしさを最初に世間に知らしめたのは2014年11月14日の放送だろう(当時の番組名は「モーニングバード」)。本人は意識していないだろうが、おそらく一茂人気が高まっていく出発点でもあった。

 この日の番組では韓国の大学受験が取り上げられた。韓国には受験生割引があり、飲食店などの料金が安くなる。美容整形が割引になるケースもある。

 それを聞いたコメンテーターの私大准教授は、笑みを浮かべながら、「だから、みんな同じ顔になっちゃうんですよ」と語った。ヘイトスピーチと批判されてもやむを得ない発言だった。

 すると、間髪入れずに声を発したのが一茂だった。「いや、同じ顔にはなってないよ。謝んなさい」と、准教授を戒めたのである。

 准教授はバツが悪そうに「ごめんなさい」と謝罪したものの、SNS上には批判が渦巻いた。一方、一茂には賞賛が相次いだのである。

 それまで「七光りタレント」などと揶揄されていた一茂の人間性やモラルへの評価が、識者と崇め立てられる学者のそれを上まわった瞬間だった。

 一茂と良純の言葉は、優等生的なポジショントークに終始しがちなプロのコメンテーターたちの発言とは一味も二味も違う。個性と意外性に満ちている。それでいて視聴者を不快にさせない。

 前出・中央大学特任教授の市川氏も「2人の意見を聞きたいという視聴者は多いと思います」と語る。一茂と良純の存在は、同番組が朝のワイドショー戦争でトップ(2016年度~18年度)に立っている理由の一つに違いない。

 一茂の場合、いい人ぶらないのも特徴の一つだ。今年4月30日夜に放送された同番組の特別番組では、「(平成に入ってからの)サッカーの台頭は本当に恐ろしかった」と語り、周囲の出演陣を苦笑させた。だが、これはまだ序の口だった。

 続けて「ドーハの悲劇」(1993年のW杯最終予選)について、「悪いけど、負けろ、負けろって、ずっと思っていた」と真顔で話し、スタジオ内を凍り付かせたのである。

 野球人としての本音なのだろうが、人前ではなかなか言えないセリフだ。サッカー日本代表の勝ち負けに一喜一憂する人はあまたいるのだから。やはり一茂は空気を読まないし、それが魅力に違いない。

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