北朝鮮が韓国に“仲介者失格”の烙印 それでも文在寅が続ける猿芝居の限界が来た
飼い犬に手を噛まれた北朝鮮
「スウェーデン演説」が伏線となったとの見方が韓国では多い。6月14日、文在寅大統領はスウェーデン議会で演説し「北朝鮮は完全な非核化の意思を国際社会に示さねばならない」と述べた。
それまで文在寅大統領が公開の席で「完全な非核化」をきちんと要求したことはなかった。「不完全な非核化」で誤魔化そうとする北朝鮮に忖度したためである。
この変節には保守系紙、朝鮮日報も驚いた。社説「『北は核廃棄の実質的な意思見せよ』との大統領のメッセージは持続せねばならない」(6月15日、韓国語版)を載せ「初めて掲げた『完全な非核化』の旗を降ろすな」と書いた。
北朝鮮は「飼い犬に手を噛まれた」と考えたであろう。朝鮮中央通信が大統領を罵倒した6月27日、北朝鮮の対外宣伝メディア「我が民族同士」も口をそろえた。
「非難を逃れようと苦しい言い訳」(朝鮮語版)で「スウェーデン演説」を念頭に、以下のように非難した。
・北欧行脚の過程の発言で、北南関係、朝米関係が膠着するのは我々に責任があるかのように世論を欺瞞した。
この記事では非難の対象を「スウェーデン演説」や「完全な非核化要求」に絞り込んでいない。そう書けば「北朝鮮は本気で非核化するつもりはない」との証拠を残してしまうからだろう。
ただ、スウェーデン演説は13日も前のことだ。引き金になったのは1日前の「世界6大通信社との書面インタビュー」だったとの見方が一般的だ。
利用価値がなくなって捨てられた
文在寅大統領は6月26日、聯合ニュースが音頭をとった、世界の6大通信社との共同書面インタビュー(韓国語)に答えた。6大通信社とは共同、AP、ロイター、AFP、新華社、タスである。
大統領は回答で「完全な非核化」との単語を9回使った。金正恩委員長自身が「おせっかいはやめろ」と警告してあるのに、まだ言うか――と、北朝鮮が怒り心頭に発したのは間違いない。
そこで直ちに朝鮮中央通信で「韓国は蚊帳の外」と文在寅大統領を嘲笑し、これ以上は「完全な非核化」を語らせまいと図ったのだろう。
だが、この記事によって北朝鮮が「使い走り」に利用してきた文在寅政権は窮地に立った。韓国政府は反応を一切示さなかった。北朝鮮から見捨てられ、当惑のあまり、声も出ない感じだった。
保守からは「使い走りの末路」と非難が集中した。朝鮮日報は社説「北朝鮮の局長が文大統領を侮辱、利用価値がなくなったということ」(6月28日、韓国語版)で、「開城工業団地や金剛山観光事業の再開を実現できなかった文大統領は、北朝鮮にとって無用になった」と解説した。
左派も普通の人も大きなショックを受けた。彼らは「文在寅大統領は半島を平和に導く仲介者」と信じていた。それを北朝鮮から否定されてしまったのだ。
政府に近い左派系紙、ハンギョレの報道ぶりが異様だった。同紙も朝鮮中央通信の記事を報じはしたが、「文在寅への侮蔑」部分はちらりと触れるにとどめた。
見出しも、ニュースのポイントを大きく外した「北朝鮮外務省米国局長、朝米交渉再開に『3大条件』を提示」(6月27日、韓国語版)だった。
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