故「内田裕也さん」に足かけ7年取材 編集者が見た“スクリーン上のロックンロール”
今年3月17日に79歳で亡くなった内田裕也さん(以下、敬称略)について、あなたはどんなイメージをお持ちだろうか。“故・樹木希林のダメ亭主”? “シェケナベイベーなロックンローラー”? このたびキネマ旬報社から刊行された『内田裕也、スクリーン上のロックンロール』を読めば、ちょっと印象は変わるかもしれない。
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音楽事務所襲撃、女性遍歴、違法ドラッグ使用、都知事選への電撃出馬……スキャンダラスにロックンロールしつづけた内田の芸能生活において、映画俳優としてのキャリアは重要だ。1963年の『素晴らしい悪女』で銀幕デビューを果たしたのち、18年公開の『星くず兄弟の新たな伝説』に至るまで、40本以上の映画に出演しているのだ。
自ら脚本を書き主演した『十階のモスキート』(83年)や『コミック雑誌なんかいらない!』(86年)など、映画ファンによく知られた「傑作」もある。とはいえ、いまあえて映画俳優・内田裕也にフォーカスするのは、異例の企画である。その狙いはどこにあったのか。最後のロングインタビューを敢行したキネマ旬報書籍編集部の平嶋洋一氏に話を聞いた。
「元々、僕は映画雑誌『キネマ旬報』の編集をしていて、12年に安岡力也さん(享年64)が亡くなったとき、裕也さんに話を伺いに行ったのです。本でもたびたび触れられていますが、裕也さんは力也さんの芸能界デビューの立役者。その時の話が面白く、一冊のインタビュー本の企画として成立するのではと考えたのです。加えて裕也さんは、勝新太郎、松田優作、ビートたけしといった超大物俳優と共演歴があり、大島渚、神代辰巳、若松孝二ら名監督とも仕事をしている。そして日活ロマンポルノにもハリウッド映画『ブラック・レイン』(89年)にも出ている。だから裕也さんのフィルモグラフィーを辿ることで、同時代の映画が持っていた熱を伝えることが出来ると思ったんです」
以降、十数回にわたって内田へのインタビューを敢行。東京・帝国ホテルの「ランデブーラウンジ・バー」、内田がお気に入りだった東京・渋谷のセルリアンタワー東急ホテルのレストラン「ガーデンキッチン『かるめら』」ほかが取材場所となった。
「裕也さんは毎回、皆さんおなじみの黒タキシード姿、あるいはアディダスのジャージ上下姿で現れます。もちろん、あのサングラスをかけて。それは目立ちますよ。目立たないのがむしろ嫌なんでしょうね。周りに女性客がいれば声をかけて……あれはイタリア人的な、いやロックンローラー流のマナーなんでしょうか(笑)。こういうところは、テレビでおなじみの、記号的な“シェケナベイベーの内田裕也”でしょう。でもインタビューの時にはサービス精神のかたまりであると同時に、常に真剣勝負。とても繊細な感受性を持っていて、気遣いのひとでもある。インタビューのあと『キミはずいぶん、熱心だね……』と素で感心されて、その時は恐縮どころじゃないなって思いましたよ(笑)」
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