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好きでやった金髪が武装の効果も生んだ

 大先輩である作家の雨宮処凛さんは、一時期ロリータファッションを身にまとっていた。バンギャル(ヴィジュアル系バンドの熱狂的な女性ファン)であったことも大きいが(バンギャルにはロリータファッションを好む人が多い)、彼女の場合、セクハラ対策だった。

 作家デビュー後、出版社のお偉いさんからセクハラされることが多く、どうすればセクハラされないか考えた末、たどり着いたのがロリータファッションだったと著書に書かれていた。私自身、ロリータファッションは可愛いと思っているが、大半の男性はその個性的過ぎる格好が珍妙に見え、ちょっかいを出しづらくなる。これは、武装である。

 昨年の冬から私は金髪にした。このイメチェンに特に意味はなく、髪色の指定がある仕事ではないし、ファッションの系統も変えたから金髪でもおかしくないし、いっちょ金髪にでもしてみるか、くらいのノリでブリーチした。

 そうすると、思わぬ副産物が舞い込んできた。満員電車で男性から蹴られない、コンビニの長いレジの列で後ろの男性から舌打ちされない、厄介なナンパに遭わないなど、男性からの迷惑行為が激減したのだ。好きでやった金髪が武装の効果も生んだ。

 高いヒールを履いている女性は気が強そうに見えるし、ロリータファッションは不思議ちゃんに見えて気が引けるし、金髪は一般常識のなさそうな怖い女に見えているのかもしれない。

 今、私は好きで金髪にしているが武装も兼ねている。パンプスにしろロリータファッションにしろ金髪にしろ、今後、武装が外れ、ただ「自分が好きだからやっている」という形になる社会を望む。

姫野桂(ひめの けい)
宮崎県宮崎市出身。1987年生まれ。日本女子大学文学部日本文学科卒。大学時代は出版社でアルバイトをして編集業務を学ぶ。現在は週刊誌やWebで執筆中。専門は性、社会問題、生きづらさ。猫が好き過ぎて愛玩動物飼養管理士2級を取得。著書に『私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』(イースト・プレス)、『発達障害グレーゾーン』(扶桑社新書)。ツイッター:@himeno_kei

2019年6月28日掲載

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