「男はつらいよ」メンバーをタヒチ旅行に招待した渥美清の知られざる素顔

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いっさい何もせず

 実はこのタヒチ旅行、倍賞の著作『お兄ちゃん』で、少しだけ触れられている。

〈ご飯を本館のダイニングでいっしょに食べるだけで、あとは一日、自由行動。魚釣りをしたり、舟で観光したり、夜は土地の踊りを見物したりしました〉

 倍賞は海で水着になって泳いでいたという。一行を誘った当の渥美は、

〈いっさい何もせず、顔に日焼け止めのオイル、首に赤ん坊のアセモ用のシッカロールを真っ白に塗って、パジャマ姿で一日中日陰に置いた椅子に深々と体を埋めています〉

 なかなかに珍しい、プライベートの姿だ。渥美は、親友であり、寅さんのテキヤ仲間役を演じた関敬六(故人)ともフラッと海外に出かけていたという。関敬六夫人の恵子さんの話。

「主人が2、3日帰らないから仕事かと思ったら、“渥美やんと旅行してきた”って。たまにアジアのどこかへ行っていたようですね。でも、渥美さんはアフリカの話ばかりしていたんですよ。“草原では民家がないから草むらでトイレをするんだ”とか、フンコロガシのことを“カブトムシみたいなやつが糞を転がしている”とか。だから、アフリカにも行っていたのでは。なにより、ふだんの服もサファリルックが多かったですから」

 先の佐藤氏はこう語る。

「渥美さんは派手な服は着ないし、偉そうなそぶりも見せない。本人としては、プライベートを隠していたというより、淡々と、自然体で過ごしていただけなのではないかと思うんです」

 それもきっと真実に近いのだろう。六本木やタヒチなどで見せたのは、素顔だったのか、それとも……。

週刊新潮 2019年6月20日号掲載

ワイド特集「『令和』に踊る『昭和』の影法師」より

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