『毎日』に乗せられた「野田前総理」国会発言の誤り 【連続追及】悪質『毎日新聞』虚偽報道!(10)

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 毎日新聞社には1週間の猶予を設けて対応を求めてきたが、残念ながら対応はなかった。5月26日、東京地方裁判所に訴状を提出した。

 一連の『毎日新聞』報道を受け、野党合同で6月14日に「国家戦略特区利権隠ぺい疑惑追及 野党合同ヒアリング」が設立されている(通称「野党PT」)。26日に早くも第5回会合が開催され、今日27日の毎日新聞22面で記事になっている。なお、確認する限り、ほかの大手紙では記事になっていないようだ。
 毎日新聞記事によれば、非公開の会合に委員謝金が支払われ、その会計経理書類は5年間の保存義務があるはずだが、内閣府は「記録が残っていない」と主張していた、といったことが焦点になっているらしい。
 当初の「利権隠ぺい疑惑」とだいぶずれてきた印象だが、それはともかく、会計経理書類のチェックは大事なことだ。金額の多寡にかかわらず、誤った公金支出がなされていないかのチェックは欠かせない。そのために会計検査院が存在する。
 一方で、匿名を前提に情報提供した提案者を守ることは、全くの別の問題だ。毎日新聞記事は相変わらず、「WGヒアリングが隠蔽されていた問題」と記載している。毎日新聞記事を受けて「利権隠ぺい疑惑追及」と称する野党PTが立ち上がった以上、義理立てしないといけないのかもしれない。
 しかし、再三指摘しているとおり、非公開にして提案者を守るのは、新聞社が情報提供者を守るために取材源を秘匿するのと同じだ。これを、あってはならない「隠蔽」と呼ぶならば、毎日新聞は、取材源秘匿もやめるべきだ。
 野党PTへの義理立てをとるか、取材源秘匿をとるか。毎日新聞はどちらかを選ばなければならない

 25日の衆議院本会議における内閣不信任決議案の討論では、毎日新聞記事を受けての発言があった。野田佳彦・前内閣総理大臣の賛成討論の関係部分を引用する(『衆議院TV』の音声から書き取り)。
〈世界で一番ビジネスをしやすい環境を作るための国家戦略特区は、権力の私物化や利権漁りの温床になっています。
 加計学園の獣医学部設置や、真珠養殖の規制緩和に至る不透明かつ不公正なプロセスは、特定の人を念頭において、岩盤規制に穴をあけたとしか思えません。
 渋沢栄一の『論語と算盤』の中に次のような一文があります。
『個人の利益になる仕事よりも多くの人や社会全体の利益になる仕事をすべきだ』
 国家戦略特区諮問会議の議長である総理と、国家戦略特区諮問会議ワーキンググループの皆さんに真摯に受け止めてほしい言葉であります〉

「特区ワーキンググループの皆さん」は、特に私を指しているのかと思う。渋沢栄一の良い言葉を教えていただき、本当にありがたい。
 だが、その前に発言されたことは、間違いだ。「特定の人を念頭において、岩盤規制に穴をあける」ことはできない。穴をあければ、誰でも通れるようになるからだ。
 規制改革では、「岩盤に穴をあける」という難題に一緒にチャレンジしてくれる提案者を募り、ともに掘削作業に取り組む。だが、いったん穴があけば、掘削作業に協力した提案者だけでなく、誰でも通れるトンネルができる。
 それどころか、掘削作業に協力した提案者が、自らは結局穴を通れないケースもままある。
 一例をあげれば、「特区民泊」だ。これは、民泊新法が昨年スタートする以前の2014年から特区限定で制度化され、「2泊3日以上」で上限なしの民泊利用が可能になっている。東京都大田区、大阪府・市、北九州市などで1570の事業者(2019年5月末時点)が制度を活用している。
 だが、制度創設に先立ち、2013年にこの提案をしてもらった事業者は、制度創設に際し多大な貢献をいただいたが、結局その後、制度を活用できていない。事業を営むエリアが、特区指定から漏れたためだ。
「加計では特定の人だけが通ったじゃないか」との声も聞こえてきそうだ。しかし、これは、穴をあけることに反対する勢力の側が、どうしても「穴を通るのは1人だけでないと認めない」と強くこだわったためだ。私たちはもちろん、誰でも通れる穴にすることを求めていたし、これからも、穴をさらに通りやすくするために取り組む。
 特区の提案者たちは、他人のあとに続くよりも、あえて先頭をきり、困難に挑むことを選んだ人たちだ。そうした人たちに、根拠もなく「疑惑」をかけ、貶めるようなことをすべきではない。「日本資本主義の父」渋沢栄一ならば、よくわかってくれると思う。

原英史
1966(昭和41)年生まれ。東京大学卒・シカゴ大学大学院修了。経済産業省などを経て2009年「株式会社政策工房」設立。政府の規制改革推進会議委員、国家戦略特区ワーキンググループ座長代理、大阪府・市特別顧問などを務める。著書に『岩盤規制―誰が成長を阻むのか―』、『官僚のレトリック』など。

Foresight 2019年6月27日掲載

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