「#日韓カップル」インスタで急増中「オッパがかっこいいから見せたい」「息子は軍隊に入れたい」
まずはこちらのインスタグラムの写真をご覧いただきたい。韓国の伝統衣装を身に着け、女性の額にキスをする男性。まるで韓国歴史ドラマのラブラブなワンシーンのようだ。だが、よく見るとコメント欄には、「初めて着た韓服! ピンクを選んだのは、王子様のお望みだからです。ふふ」というハングルに交じって、日本語が。さらにコメント欄を開くと、「#日韓カップル」というハッシュタグがある。実はこの写真をアップした左の女性は日本人だ。
SNSの世界で今、「#日韓カップル」が増えている。インスタグラムで「#日韓カップル」を検索すると、ペアのパジャマを着てベッドの上で自撮りする2人、頭を寄せ合い両手でハートを作る男女などの写真がずらりと並ぶ。その数、167,035件(2019年6月26日現在)で、毎日数百件ずつ増加中。ほとんどがピンク色のフィルターに包まれた、いわゆる「映える」写真だ。ちなみに「#日中カップル」は2931件、「#日米カップル」は1310件。「#日韓カップル」がずば抜けて多いのだ。
国境を超えた愛を育む人は多かれど、なぜ今「#日韓カップル」なのか。「#日韓カップル」というキーワードで発信する人たちに会ってみた。
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息子が生まれたら軍隊に送りたい
「『#日韓カップル』ってハッシュタグをつけたのは、ミーハー魂。幸せなのを見せたいっていうのもありました。オッパがカッコいいので、見せたいっていう気持ちがあって」
佐藤穂奈美さん(27歳)は笑顔で語る。伝統衣装の写真をインスタグラムにアップしたご本人。たしかに、隣に座っている“王子様”ことキム・シジンくん(28歳)は、BTSのメンバーSUGAにちょっと似たイケメンだ。ちなみに“オッパ”とは、韓国語で「お兄さん」だが、転じて年上の恋人や先輩に対する呼称としても使われている。
ふたりの出会いは2年前の7月、韓流タウン新大久保でのことだった。穂奈美さんは当時、新大久保のバーで働いていた。
「オッパが働いている貿易会社の社長さんが、私がいたお店の隣のバーのオーナーで。お互いの店を行ったり来たりする常連同士だったんです。でも、最初は特に印象ありませんでした」(穂奈美さん)
シジンくんに、穂奈美さんに対する第一印象をたずねると、「かわいい子だな」。「顔が韓国人っぽいところ日本人っぽいところ半々で、僕の好みのタイプ。目も、鼻も、口も好き」と、照れながらも率直に明かす。
言葉を交わすようになったのは、共通の知り合いがバーを辞めるので送別会を行い、写真をシェアするためにグループラインを作成したことがきっかけ。わずか2時間後にシジンくんから「家、着いた?」とメッセージが届き、以後、毎日連絡が来るようになった。
お互い相手の国の言葉が話せない穂奈美さんとシジンくんは、ラインの翻訳機能を使い、コミュニケーションを取っていく。そんなふたりの距離をぐっと近くしたのは、一本の映画だった。竹内結子と中村獅童主演でヒットした「いま、会いにゆきます」(2004年)。「雨の季節に戻ってくる」という言葉を残して亡くなった妻。1年後、雨が降り続く日に、妻は本当に現れた。ただし、記憶をすべて失って。……というファンタジーラブストーリーだ。
「日本に来る前から大好きだった映画です」というシジンくんと、「中学校の時、初めて買ったDVDが『いま、会いにゆきます』でした」という穂奈美さん。映画と同じように雨が止まぬ休日、穂奈美さんは自宅で一人、久しぶりに「今、会いにゆきます」のDVDを見ることに。SNSでそのことをシジンくんに伝えると、「僕も見たいな!」という返事が届く。
「家にはちょっと……」と断るが、ほどなく「ちょうど近くまで来たから」というメッセージが。ドアを開けると、降り続ける雨の中、シジンくんが傘を差して立っていた。穂奈美さんは家の中に招き入れ、一緒に映画を見ることに。その日、シジンくんが思いを告白。以来、2人はずっと一緒に暮らしている。
「付き合い始めた日からいきなり一緒に住んだなんて、初めて。何かかわいそうな感じがしたし、私、引っ越したばかりで、お金がなくて。家賃半々になるからいいかなって思ったり(笑)。でも、スキンシップは2週間ぐらいほとんどなかったんです」と、穂奈美さん。“スキンシップなし”の理由について、シジンくんはこう明かす。
「見た目が軽そうに見えるってよく言われて。穂奈美に遊び人だと思われるのが嫌だったんです」
わずか2週間後には、シジンくんが尊敬するという父親に穂奈美さんを紹介するために、韓国へ。ストレートな告白や、硬派なところ、親を大切にする姿勢。穂奈美さんは、シジンくんの男気ある考え方には軍隊経験が大きく影響していると考えている。
「韓国の男性は、芯がある。仕事に対しても忍耐力があるし、オッパのように一人の女性だけをずっと見るとか、それも兵役生活からきているんじゃないかと思うんですよね。将来私たちに息子が生まれたら、ぜひ軍隊に送りたいと考えています」
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