「令和の怪物」佐々木朗希は過去の“怪物投手”と比べてどこが凄いのか
今年の高校野球、そして今秋のドラフト会議で最も注目される佐々木朗希(大船渡)。6月2日には早くも日本ハムがドラフト1位で指名すると公言し、場合によっては野茂英雄(89年)と小池秀郎(90年)の8球団1位指名を上回る可能性も十分に考えられる。まさに“令和の怪物”という呼び名に相応しいフィーバーだ。果たして、佐々木のどこが凄いのか。これまでに高校卒で高い評価を受けて、プロ入りした過去の怪物投手と比較しながら検討してみたい。
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佐々木を語るうえで、まず話題となるのが最速163キロというスピードである。これまで高校生投手が記録した最速は、大谷翔平(エンゼルス)が花巻東の3年夏に記録した160キロ。佐々木は早くも春先にそれを上回る数字を叩きだした。プロ野球まで含めても、これは大谷が2016年のクライマックスシリーズでマークした165キロに次ぐ歴代2位の数字である。最速150キロ以上をマークする高校生は毎年現れるが、やはりこれだけのスピードは並ではない。
そして、佐々木の凄さは、そのスピードが“瞬間最大風速”ではなく、コンスタントに速いボールを投げられる点にあるのだ。この春は、夏に向けての調整と今後のことを考えて1試合を全力で投げ切る試合はまだないように見える。だが、昨年夏の岩手大会1回戦では、大差のついた9回こそ140キロ台前半が多かったものの、1回から8回まで毎回150キロ前後のスピードをマークしている。さらに、今年初の対外試合となった3月30日の対作新学院戦(練習試合)でも気温8度の寒さながら、3回を投げて平均150キロを超えるスピードをマークしている。
スピードについては、散々報道されているのでこれくらいにするが、もちろん佐々木の魅力は、ストレートの速さだけではない。190cmという長身を自在に操るバランスの良いフォームが何より素晴らしい。左足の膝が胸につくほど大きく上げるが、その時でも背筋が曲がることなく真っ直ぐ立ち、そこから広いステップで踏み出して下半身の力を十分に使って腕を振ることができる。
“平成の怪物”松坂大輔(中日)も、高校時代はどちらかというと上半身が強いフォームで、強靭な背筋力でボールを抑え込んでいる印象だったが、佐々木にはそのような上半身の力みがほとんど感じられない。同じ長身投手のダルビッシュ有(カブス)や大谷翔平の高校時代と比べても、下半身の柔軟性で明らかに上回っているように見える。
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