G20直前、金正恩がもらって小躍りした「トランプ親書」の中身は?

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 金正恩(キム・ジョンウン)委員長がトランプ(Donald Trump)大統領から親書をもらって小躍りする。何が書いてあったのか――。大阪でのG20サミット(20カ国・地域首脳会議)を前に、大変動を予感させる駆け引きが始まった。(鈴置高史/韓国観察者)

「並々ならぬ勇気」と称賛

 6月23日の朝鮮労働党の機関紙・労働新聞は「金正恩委員長にトランプ大統領の親書が寄せられた」と1面で報じた。記事には執務室の机で眼鏡をかけてトランプ親書を読む金正恩委員長の写真が付いている。よほどうれしい内容が書かれていたのだ。

「我が民族同士」(日本語版)は、敬愛する最高指導者(金正恩委員長)の親書への歓迎を以下のように伝えた。

・親書を読んで立派な内容が盛り込まれていると述べ、満足の意を表した。
・トランプ大統領の政治的判断能力と並々ならぬ勇気に謝意を表すると述べ、興味深い内容を慎重に考えてみると語った。

 米国のポンペオ(Mike Pompeo)国務長官も同日「トランプ親書が話し合いの土台になるよう希望する。直ちに対話再開の用意がある」と語った。

 ただ、米朝双方とも親書の内容は明かしていない。「トランプ大統領の並々ならぬ勇気」を示す親書とは、いったいどんな内容だったのだろうか。

米国が圧倒的に優位

 米朝交渉は暗礁に乗り上げている。今年2月末のハノイの首脳会談で、北朝鮮が「一部の核施設の廃棄」と「制裁の全面解除」を取引しようと持ちかけた。それを米国は真っ向から拒否。「完全で検証可能かつ不可逆的な非核化」(CVID)を要求した。

 では、今回の親書でトランプ大統領は「CVID」の緩和を打ち出すなど、北朝鮮の主張を少しでも受け入れたのだろうか。それはまず、なかろう。

 なぜなら金正恩委員長は「満足」と言ったが、「慎重に考える」とも表明した。「CVID緩和」の提案なら、飛びついたはずだ。

 そもそも今、立場は米国が圧倒的に強い。米国が譲歩する必要は全くない。経済制裁で北朝鮮は息も絶え絶えになっている。

 そのうえ米国は「先制核攻撃」をチラつかせ始めた。準備がほぼ、終わったからだ(「米国にとって北朝鮮は狂信的なカルト集団、“先制核攻撃”があり得るこれだけの根拠」参照)。

 図表「米国が北朝鮮に使うムチとアメ」を見ても「米国優位」は明らかだ。米国が政府の運営する放送局VOAを通じ、北朝鮮を圧迫する。

すると、金正恩委員長はトランプ大統領に親書を送ったり、「忍耐心を維持する」と語ったり、「わび」を入れる構図になっている。

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