巨人、菅野智之の不調は深刻、出口の見えないトンネルに…【柴田勲のセブンアイズ】

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 巨人が交流戦でソフトバンクとの最終決戦に敗れて、5年ぶりの優勝を逃した。それでもリーグ首位で終わり、交流戦前に首位・広島に4・5ゲーム差を付けられていたが、逆に1・5ゲーム差を付けて首位に立った。広島の不調が手伝ってだが、交流戦は順調だったし接戦を結構モノにしていた。

 29日からのリーグ戦が再開(秋田・ヤクルト)するが、やはり心配なのは菅野智之と坂本勇人の不調だ。

 頂上決戦での菅野、ご存じの通り、先頭打者の福田秀平に1発を浴びてリズムを崩して、この回被安打3、2個の四球も絡んで4点を失った。二回には先頭打者、投手の和田毅に四球を与えて、原辰徳監督は交代をコールした。1回3分の0での降板はプロ初だ。

 打たれ方が悪い。四球、それも投手への四球。これ以上は任せられない。当然だった。

 正直な感想を話すと、マウンド上の立ち姿から覇気というのか、打者に向かう迫力が伝わってこない。ボールに勢いがないし、体の切れがないからボールにも切れがない。

 菅野、制球力はいい。打者は初球の甘い球から狙ってくる。そこで四隅を突いて自分に有利なカウントに持っていこうとするのだが、いまは以前のようにキッチリとできていない。カウントを悪くして、力のない甘い球を打たれる。この傾向が強い。〈注1〉

 16日の日本ハム戦(札幌)でも一回に先頭から4連打を含む5安打で3失点した。この時は二回以降、配球の組み立てを変えてしのいだが、これはあくまでも“対症療法”で、根本的な解決策ではなかった。

 腰の違和感を引きずっての体調面が原因なのか。ただ1つ言えるのは菅野の本格復調があってこそ、巨人の優勝もある。彼の代役となる投手はいない。

 そして坂本だ。 21日のソフトバンクとの緒戦では5三振を喫するなど打率は一時3割を切った。坂本の不調の原因はハッキリしている。“疲れ”だ。

 開幕から主将としての責任感からチームをずっと引っ張ってきた。梅雨時を迎えて身体面での疲れがだいぶ出ている。

 ボール球に手を出し、好球をファウルする。おそらく疲れからくるタイミングのずれだ。春先、調子のいい時は自分のスイングができた。体、腰の切れもあった。

 いまは二塁の頭の方へ打つつもりでも、どうしても引っ張りにかかる。腰の切れがないからバットが下から出る。ファウルになる。おかしい。またボール球に手を出す、この繰り返しだ。腰が重いのかもしれない。

 幸い、リーグ戦再開までには時間がある。思い切ってノンビリするのもありだ。技術面で問題はない。菅野同様に巨人にとって坂本の代わりはいない。

 その意味で菅野の不調の方が深刻だ。中6日と登板間隔を空けているし、ファームでの再調整も行ってきた。私の見るところ、不調の「トンネルから抜けるのがどこか分からない」状態だ。

 もちろん、菅野ほどの投手だ。本人が自分の状態を一番よく分かっているはずだ。精神的にもキツいだろうが、必ずや、復調のきっかけをつかむと信じている。

 交流戦中に若林晃弘、桜井俊貴ら多くの新戦力が出てきたし、岡本和真も定位置を死守している。阿部も21日に「6番・一塁」で東京ドーム初スタメンを果たした。年を取ってくると、ベンチに置いておくだけではダメになる。本人の状態、ゲームの流れを見ながら使って欲しい。これもチームのためになる。

 さらに言えば新外国人、ダイヤモンドバックスの3Aからルビー・デラロサ投手(30)=右投げ右打ち=の獲得を決めたという。今週中にも来日する。救援陣の柱が1枚まで多く欲しいいま、できる手を打つということだろう。さて、どうなるか。リーグ戦再開が楽しみだ。

 注1 昨季の菅野は28試合に登板して15勝8敗。今季は23日現在、11試合で7勝4敗。昨季の被本塁打は14本、四球37。今季は被本塁打15本、四球17。

柴田勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会副理事長、14年から巨人OB会会長を務める。

週刊新潮WEB取材班

2019年6月25日掲載

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