老後2千万円問題は「他人事」じゃない! いま取るべきたった2つのアクション

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老後の資産形成の第一歩は「支出」とうまくつきあうこと

小野原先生:少し補足しましょう。まず「減る可能性があるもの」について。教育費は、お子さんの独立と共にかからなくなる傾向に。ただしお孫さんへの援助などで引き続きかさむ方も中にはいらっしゃいます。
 保険費は、払い込みが終わればかからなくなりますが、これは商品次第ですね。

 そして住宅費。住宅ローンを完済すれば一気に負担はなくなります。といっても固定資産税やマンションなら管理修繕費などはお忘れなく。ただ住宅費は老人ホームに入られたりすると今より高くなるケースも十分ありえます。

――一人ものの私は、終のすみかは老人ホームが有力候補。選ぶ施設によっては今よりかかる可能性もありますね。

小野原先生:そうなんです。次に「付き合い方で大きく変わるもの」として自動車関連費があります。要するに「いつまで車を持つか」という話ですね。住んでいる地域にもよるでしょうが、シェアサービスやタクシーを利用してこの部分を大幅にコストダウンさせることは可能だとは思います。

――そして「食費」は意外と減らないんですね。これ、ちょっと予想外です。

小野原先生:確かに食べる量は減っていくかと思いますが、健康を考えてオーガニック食品を選んだり、サプリを取り入れたり。「少しだけいいものを」という思考になる方もいらっしゃると思います。そして一度上げてしまったクオリティは、なかなか下げにくいのが事実です。

――最後に「老後だからこそ増えるもの」もあるんですね。

小野原先生:はい。現役世代と違って時間にゆとりのある老後。趣味に費やす時間とお金が増えるのは想像できますよね。次に交際費。会社という日々通う場所がなくなった方たちが、自分の「居場所」を求めて同窓会やら同期会やら何かとかこつけて飲み会に集まる、これもなんとなく想像できますよね。また遠方に住んでいらっしゃる知人のお見舞いに行くとか、お葬式に出るとか、そういった種類の交際費が増える傾向もあります。
 そして医療費。調子の悪いところがあちこち出てきては病院に行ったり、薬を買ったり。これも簡単に想像できると思います。

――漠然と老後は支出が減るのかなと思っていましたが、単純に減るわけではなさそうですね。

小野原先生:そうですね。きちんと老後の支出傾向を知って、対策をする必要がありますね。

――ここまで聞くと、入ってくる収入額も異なるし支出額も異なるし、となると、一人一人必要な老後資金が違ってくるのも納得です。

小野原先生:そうですね。一人歩きしてしまっている金額に対してどうこう考えるのではなく、ご自身にとっていくら必要かをざっくりでもいいので一度把握してみてほしいと思います。

――では、必要な老後資金を把握したとして、今からできることってなんでしょうか?

小野原先生:資産形成については今まででの連載でもお伝えしてきましたので、今日は多くの人が今すぐアクションできる内容をお伝えしますね。

――ぜひ!

小野原先生:老後の資産形成の第一歩は「支出」とうまくつきあうことなんです。そのためのファーストステップは「今の支出を知る」こと。とっくに出来てるよ!という方は具体的な資産形成を考えられたらいいのですが、実は毎月の支出すら把握できていないという方は、まずは1カ月でいいので家計簿をつけてほしいです。方法はアプリでも手書きでもいいですよ。

――家計簿ですか。でも1カ月とはいえ、実際に続けるのって結構きついように思うんですが。

小野原先生:そういう方は、1カ月間、ひたすらレシートを集め続けてみてください。多少、もらい忘れがあっても構いません。もらったレシートは1カ月、ただ封筒か何かにため続けてください。そして1カ月の終わりに、1回だけ費目にわけて集計をするんです。この作業の目的は「どんなものに」「いくらぐらい使っているか」という「自分の支出傾向」を知ることです。1円単位の帳尻をあわせることが目的ではないので
大まかで構わないですし、費目も自分なりに決めてもらっていいです。例えば「タバコ代」「喫茶店代」とか。そうすると、自分が何にどれぐらい使っているかということを認識できるんです。長い老後のために、自分の支出傾向を知る。これがまず第一に行ってほしいことです。

――耳が痛いですが、自分もやってみようと思います。

小野原先生:そしてその後で行うべき2つ目のことが「支出の見直し」です。これは何も、全てのものに対してケチケチ節約しなさいということではありません。見直しの鉄則は「小さいものより大きいものから」「流動費より固定費から」。ランチで毎回、節約を意識して食べたいものが食べられないって少し辛いですよね。ですので、金額の大きな住宅関連費用や保険代から見直すことをおすすめします。特に生命保険代はお子さんが独立された後でしたらそこまでかける必要がないというものもあるかもしれません。

――その他にも見直せるポイントはありますか?

小野原先生:金額はそこまで大きくないかもしれませんが、携帯電話の基本使用料や不要なオプション代、通っていないスポーツクラブ代、読んでいないのに定期購読している書籍代なども見直し対象ですね。探せば結構あると思いますよ。見直すこと自体は少し面倒ですが、一度見直してしまえば後は何のストレスも感じずに支出をおさえられるわけですし、たとえ数百円であってもそれが長い期間になれば大きな金額になります。「確かに…」と思った方は、ぜひ今日、行っていただきたいです。少しでも早めに支出を見直せば、その分で貯蓄ができ、そのお金で新たに資産形成もできますしね!

〈今日の学び〉
・老後2千万円問題は「自分ごと」として捉えることが大切。
・老後の資産形成、すぐに行うべきことは「今の支出を知ること」。
・その後で行う「支出の見直し」は、大きいもの&固定費から。

ファイナンシャルアカデミー
お金の教養を身につけるための総合マネースクールとして2002に創立。東京校・大阪校・ニューヨーク校・WEB受講を通じて16年間で延べ約50万人が、貯蓄や家計管理といった身近なお金から、資産運用、社会を豊かにするお金の使い方までを学習。初心者向けの定番「お金の教養講座」https://www.f-academy.jp/school/kyouyousemi.htmlや40、50代に特化した「定年後設計スクール無料体験会」https://www.f-academy.jp/school/retirement.htmlが人気。

小野原 薫(おのはら かおる)
ファイナンシャルアカデミー認定講師、ファイナンシャルプランナー、相続診断士。大手証券会社勤務時代に、一受講生としてファイナンシャルアカデミーの講座を受け、中立的な金融経済教育の必要性を強く感じ同社の講師に転身。現在は成人向けの「お金の教養講座」や「投資信託スクール」の入門講座を担当する他、高校での出張授業など若年層への金融経済教育も積極的に行なっている。明るく誰にでもわかりやすい講義が好評。

2019年6月24日掲載

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