「グリコ・森永事件」元捜査員が語った27年後の新事実

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「どうしてブツを…」

 2回目の目撃現場は、名神高速道路大津サービスエリア。84年11月のハウス食品工業脅迫事件の時、このF担は、現金1億円を積んだ輸送車を警護するため、サービスエリアに入った。その際、レストラン横の電話機の前で、輸送車を凝視する“F”を見たのだが、先に触れたNHKの番組が発掘した新事実の一つは、この場面に関するものだ。

 この日の捜査は大阪府警が「単独」で行うことになっていたが、滋賀県警は密かに現場に捜査員を派遣。大津サービスエリアを張り込んでいた捜査員が、輸送車が到着する前の“F”の様子を目撃することになったのである。『未解決事件 グリコ・森永事件 捜査員300人の証言』(NHKスペシャル取材班、新潮文庫)によると、その男は、

〈目つきとかはもうまさに、似顔絵のとおり〉(目撃した捜査員の証言)

 で、ベンチに座って何かを貼りつけていたという。

 それについて、先のF担の一人に聞くと、呻(うめ)くようにこう言った。

「そういう怪しげな様子を見たのであれば、どうしてそのブツを確認してくれなかったのか……。なぜ後日にでも現場に行ってくれなかったのか……」

 結局、金の受け渡しは行われずじまい。その日以降、大阪府警は血眼になって“F”の行方を捜したが、結局、辿りつくことは出来なかった。

 グリコ・森永事件に詳しいノンフィクション・ライターの新井省吾氏の話。

「当時、マスコミは『かい人21面相』の脅迫文の内容などを連日報道し、劇場型犯罪の走りとなった事件でした。が、今の時代に同様の事件が起こったとしても、防犯カメラでアッと言う間に顔が割れ、逮捕されるでしょう。昭和の頃だからこそ、あんな大胆不敵な犯行が可能だったのです」

 企業への脅迫電話が「子どもの声」でかかってくることもあったこの事件。現在、中年の域に達しているであろうその「子ども」はどこで何をしているのか。

週刊新潮 2019年6月20日号掲載

ワイド特集「『令和』に踊る『昭和』の影法師」より

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