石原裕次郎は超・気遣いの男だった 「風呂場で背中を流してもらいました!」

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運転手にも

「黒部の太陽」の公開後。

 辻氏は、銀座でのボスの姿に目を瞠った。

「高級クラブにお供させてもらったときのこと。映画の撮影などでお世話になった建設会社や電力会社の重役の方がいると、かなり飲んでいたとしてもサッと立ち上がって相手の席へ行き、“お世話になりました”と丁寧に頭を下げるんです。そんなことが何度もありました。気遣いもそうですけれど、礼儀も大切にしていましたよ」

 そういう姿勢はなにもエラい人たちだけに向けたものではなく、

「私は、風呂で背中を流してもらいました」

 と、懐かしむのはカメラマンのムトー清次さん。

「70年ごろにやった全国リサイタルで、ある地方についていったんです。顔は知られていましたけれど、風呂で一緒になったら、“お前の背中、流してやるよ”。大スターなのに、本当に気さくにね。懐が深いと思いました」

 元芸能レポーターの藤田恵子さんは、こんな経験をしている。

「大動脈瘤の大手術のあと、私はよく病院などで取材をしていました。お仕事に復帰されたとき、神奈川の逗子にあるご実家にお邪魔したことがあったんです。報道関係のハイヤーで移動していたのですが、裕次郎さんにしてみれば関係のないハイヤーの運転手さんにも同じ食事を用意されていたんです。裕次郎さんのスタッフの方々とみんなで揃ってちらし寿司をいただいたのですが、運転手さんもまったく同じもの。当然、運転手さんは“こんなことは初めてです”と大感激でした」

 地方ロケでも、現場にいる全員の食事の面倒を見るという考え方だったそう。

「役者さんはもちろんのこと、大道具さんや遅くなる車両部のドライバーさんまで、全員が揃うまで待ってからみんなで一緒に食べるんです」

 この気遣いこそ、大スターになった秘訣なのだろう。

週刊新潮 2019年6月20日号掲載

ワイド特集「『令和』に踊る『昭和』の影法師」より

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