大人の短パン、「アリ」派が増えた?(中川淳一郎)

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 今年の夏も猛暑が恐ろしいことになりそうです! 5月の北海道で39・5度を記録って一体なんなんですか! 2006年、ネットニュースの仕事を始めた直後に「こんな論争が勃発している」と紹介したのが「大人の短パン、アリ? ナシ?」論争です。某新聞社のネット版記事が問題提起をし、その後匿名掲示板やニュースのコメント欄で論争が過熱、その時は基本的には「賛否両論」状態でした。

 あれから13年、少なくとも東京では「アリ」派が増えているのでは、という感覚があります。クールビズもすっかり浸透し、ネクタイの売り上げ減少にアパレル業界が悲鳴をあげる状況で、スーツ以外で仕事することが許されないような空気は私の周囲にはありません。

 出版社の人々(ただし週刊誌記者と管理部門、営業系は除く)は私服だらけですが、まださすがにフリーライターを除き短パンの人は滅多に見ない。しかし、広告・IT・デザイン業界になると相当数の短パン社員がいます。しかもサンダルで社内を闊歩するのです。

 隔世の感がありますが、06年には否定派からこんな意見を見聞きしました。

「いい年した大人が短パンなんて情けない」「汚らしいスネ毛を見せるなんてみっともないし見苦しい」「短パンは遊びの時にはくもの」

 賛成派はこう反論しました。

「暑いんだからしょうがないだろ」「長ズボンは合理的じゃない」「格好で仕事の能力が決まるのなら、長ズボンの無能が多いのは何だ」

 その4年後、2010年は、135年(当時)にも及ぶ観測史上最も暑い夏でした。以後「短パン差別」は激減し、私も夏の格好は短パン以外あり得ません。

 それにしても、現在の70歳以上の人って私服が妙に律儀なんですよね。「ループタイ」というものは、定年後のネクタイ代わりの男のマナーとして使われているのでしょうが、「首元はキチンとしなくては……」的な恥じらいを持っているのかもしれません。

 短パンをはくにしても、シャツを外に出していてはみっともないと思うのか、「シャツイン」をし、これが実に珍妙なダサさを醸し出すのです。しかも、サンダルをはくのは失礼だと思うらしく、スニーカーをはき、白い靴下をスネのあたりまでしっかりとあげている。

 ついに短パンデビューは果たしたものの、その姿からはまだどこかに恥じらいと「オレは大人の男として非常識なことをやっているのではなかろうか……」という背徳感が感じ取れます。

 キッチリとした職業の代表格である役人や政治家も、夏になるとノーネクタイが当たり前になりました。沖縄の政治家など、「かりゆしウェア」で公の場に登場します。玉城デニー知事のかりゆしウェア姿はなかなかステキですし、いっそのこと次は「短パン」にもチャレンジしていただけませんでしょうか。

「沖縄に寄り添っている」ふりをしたい内閣の人々が「かりゆしウェア+短パン」で夏を過ごす、なんて事態になったらいよいよ「右に倣え」が好きな日本のサラリーマンの皆様も「暑いから短パンなんだよ。みんなはいてるだろ!」なんて言い出すかもしれません。クールビズに続く「短パンビズ」登場もあり得ますぜ!

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

週刊新潮 2019年6月20日号掲載

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