セクハラ社長に「ゴホン!」と言えば左遷とクビの「龍角散」

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“なんであいつだけ”

 業界関係者によると、

「90年代後半に彼女が開発したのが服薬補助ゼリーでした。飲み込む力の弱い高齢者や小さい子どものために、薬をゼリーで包み、誤嚥(ごえん)を防ぐ画期的な商品だったのです」

 当時、龍角散は40億円だった売上に対し、ほぼ同額の負債も抱え、経営不振に喘いでいた。その後、子ども向けの「おくすり飲めたね」などのゼリー商品が大ヒットし、今では、売上200億円強になるまでに。

 龍角散の顧問を務める砂田久一氏がこう指摘する。

「販売後、各社から“なぜこういう商品を思いつかなかったのか”という声が聞かれました。実際、類似品がいくつも出ていますが、『おくすり飲めたね』の牙城は崩せていません」

 まさに会社を救った功労者のはずだった。

 さる事情通が言う。

「そのセクハラ現場に同席していたのが、篤子さんだったのです。あまりの言動に法務部長だった妹に相談。セクハラの事実が発覚したというわけです」

 そうした経緯から姉も社長から糾弾されてしまう。

「今年の1月になって、開発本部長など兼務していた七つの役職のほぼ全てを解かれ、東神田にある本社から千葉にある工場へ左遷された。社長は“セクハラ問題をでっち上げたからだ”と言い放ったそうです」(同)

 臭いものには蓋、を地で行く仕打ちだと先の龍角散関係者は憤慨する。

「篤子さんは工場でパソコンを与えられず、席に座っているだけ。打ち合わせがあっても、本社の中に入れてすらもらえないという状況なのです。さすがに社内でもやりすぎだ、という声が挙がっています」

 その理由はセクハラのみではなく、

「龍角散を救った女性として、篤子さんは度々メディアで紹介されていました。昨年3月25日放送のTBS系『林先生が驚く初耳学!』で林修さんが会いたい女性の一人として取り上げられています。再現ドラマまで作られ、篤子さん役は女優の酒井美紀さんが務めた。ところが、これらのメディア出演に藤井社長は“なんであいつだけチヤホヤされるのか”と周囲に不満をもらし、篤子さんと距離を置くようになりました」(同)

 セクハラ騒動の陰に見え隠れする嫉妬と虚栄心。さて、当事者たちはどう答えるか。姉妹に聞くと篤子氏は取材に応じてもらえず、妹の元法務部長が代わりに、

「会見でお話ししたことがすべてです」

 と、言葉少なに話す。一方の藤井社長に電話すると、

「会社として何もまずいことはしていません」

“喉元過ぎれば”なのか、あるいは“飲みこめない”事情でもあるのか、そう言って慌てて切ってしまった。

 セクハラを指摘するだけで左遷とクビだなんて。そんな横暴を続けていたら、“咳をしても一人”なんてことになりかねない――。

週刊新潮 2019年6月20日号掲載

特集「セクハラ社長に『ゴホン!』と言えば左遷とクビの『龍角散』」より

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