米国にとって北朝鮮は狂信的なカルト集団、“先制核攻撃”があり得るこれだけの根拠
米国の「先制核攻撃」の脅迫に北朝鮮がうろたえる。米国の脅しは思い付きではないからだ。米朝の隠れた「核のつばぜり合い」を韓国観察者の鈴置高史氏が対話形式で解き明かす。
手も足も出ない北朝鮮
――北朝鮮は米国の「核も辞さない」姿勢に反応しましたか?
鈴置: 「米国が北朝鮮を先制攻撃するなら核を使うか? その時、韓国は? 読者の疑問に答える」を読んだ多くの人から、そう聞かれました。
答は「イエス」です。5月29日、北朝鮮は米国の核戦力拡充を非難しました。朝鮮中央通信の「朝鮮外務省米国研究所の政策研究室長 力の使用は決して米国の独占物ではない」(5月29日、日本語版)です。
この記事は「最近は(中略)核弾頭搭載が可能な海上発射巡航ミサイルを朝鮮半島の周辺に配備しようとする動きまで見せている」と米国を批判しました。
5月23日、「核弾頭搭載の巡航ミサイル」で威嚇した米国防総省のファンタ(Peter Fanta)副次官補の発言に対し、6日後に反発したわけです。北朝鮮の狼狽ぶりが分かります。
米国が先制核攻撃の体制を整えれば、北は手も足も出なくなる。米国の第1撃により、発射前の核ミサイルを破壊されてしまうからです。北は「核攻撃してきたら、核で反撃するぞ」と凄めなくなります。
韓国の自業自得
――北朝鮮が韓国との軍事境界線沿いに配備したロケット砲は?
鈴置: それらは第1撃ではすべては破壊できないと見られています。砲門の数が極めて多いからです。北朝鮮はこれらで反撃するかもしれません。
しかし、米軍とその家族は射程外の韓国南方に、あるいは韓国から引き上げる方向です(「ついに『在韓米軍』撤収の号砲が鳴る 米国が北朝鮮を先行攻撃できる体制は整った」参照)。
在韓米軍の南方移転、あるいは撤収を実施すれば、米国は北朝鮮に捕られていた「人質」がなくなり、反撃を恐れずに攻撃できるようになります。対北先制攻撃のハードルが一気に下がるのです。
在韓米陸軍の撤収は早ければ、今秋にも始まると見られます(「米軍は韓国からいつ撤収? 北朝鮮を先制攻撃する可能性は? 読者の疑問に答える」参照)。
――でも、ロケット砲はソウルをはじめ韓国に被害を及ぼします。
鈴置: 北朝鮮のロケット砲は韓国軍が叩くことになるでしょう。米空軍も手助けはするかもしれませんが。米韓同盟――米韓相互防衛条約に自動介入条項はありません。米国に北朝鮮から攻撃された韓国を助ける義務は厳密にはないのです。
朝鮮戦争の休戦協定を締結した直後の1953年10月、米韓相互防衛条約が結ばれました。米国は韓国が勝手に北朝鮮を攻撃し、戦争が再発することを強く恐れて自動介入条項は設けなかったのです。韓国の自業自得です。
「米国・日本」VS「北朝鮮」
――そうは言っても、米韓は同盟関係にあります……。
鈴置: 次の戦争――第2次朝鮮戦争は本質的には「米国・日本」VS「北朝鮮」の戦いです。先制攻撃を知らされない韓国は、少なくとも最初は傍観者に過ぎないのです。
米国が先制攻撃を仕掛ける場合、グアムと在日米軍基地、それに海から爆撃機とミサイルを飛ばします。在韓米軍基地は使わない可能性が大きい。
先制攻撃の意図を察知した韓国が北朝鮮に通報する懸念からです。米国は今も韓国を信用していないのです(『米韓同盟消滅』第1章「離婚する米韓」参照)。
そもそも韓国は米国を裏切っています。裏切り者を守るほど米国人はお人よしではありません。北朝鮮のミサイルを迎撃するための米国のTHAAD(地上配備型ミサイル迎撃システム)基地だって、中国に気兼ねして韓国政府はソウルを守る場所には作らせませんでした。
現在、運用中の南方の基地も「市民」が嫌がらせして道路を封鎖。米軍はヘリコプターを使って補給しています。韓国の側から同盟国であることをやめてしまっているのです(「ついに『在韓米軍』撤収の号砲が鳴る 米国が北朝鮮を先行攻撃できる体制は整った」参照)。
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