50歳で「貯蓄ゼロ」でも「老後資金2千万」は貯められる! 専門家が徹底解説

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「2千万必要」とは限らない

 景気は良くならず、消費増税も延期の可能性が低くなっている。年金への不信感も相変わらず強い。多くの国民が先行きに不安を抱えている。そんなところにわざわざ金融庁の金融審議会が「95歳まで生きるならば夫婦で2千万円の老後資金が必要」と報告書に記載していることがわかったので、政府が説明に追われる大騒動になっているのはご存知の通りだろう。

 果たして老後のためにどれだけ蓄えがあればいいのか? よほど恵まれた人でない限りは、一度は考えたことがあるに違いない。最近では、20代から個人向けの年金を始める人もいるという。

 備えあれば憂いなし。準備は早いに越したことはない――と思いがちだが、経済ジャーナリストの荻原博子さんは、「そうとは限らない」と説く。意外なことに、老後資金の心配をあまり若いうちからする必要はない、50歳からで十分だ、というのだ。

 なぜそうなるのか? ベストセラーとなった荻原さんの著書『払ってはいけない 資産を減らす50の悪習慣』から引用してみよう。

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50歳までにプラス・マイナス・ゼロを目指す

 今は、若い人でも老後不安を抱える人が増えているようです。けれど、若いうちから老後のことなど心配してはいけません。
 なぜなら、長い人生の中では、老後になる前に不安を解消しておかなくてはならないことがたくさんあるからです。まず目の前には、マイホームのローン、子供の教育費、両親の介護その他、山積みの問題があります。
 そして、老後の心配というのは、多くの人にはその先にあるものだからです。
 山登りにたとえるなら、体も鍛えていないうちからいきなりエベレストに登ろうと思っても難しい。まず目前にある山を制覇し、自信をつけて次の山を目指し、最後にエベレストに登るというのが順当な方法でしょう。

 それと同じように、いきなり老後のことを考えるとなかなか目標に到達しません。老後を考える前に、まずは、老後前の50歳までにしっかりと足元を固めておくことが大切です。
 しっかり足元を固めるとは、借金の少ない堅実な家計にしておくことです。

50歳で借金がなければ、黄金の老後が待っている

 家計は、50歳の時点で、借金と貯蓄がプラス・マイナス・ゼロになっていれば、黄金の老後を迎えることができます。
 たとえ貯金がゼロでも、50歳までに住宅ローンが終わり、子供の教育費がかからなくなっていれば、家計においては勝ち組です。なぜなら、50歳までに住宅ローンが終わっていれば、それまで住宅ローンとして支払っていたお金を、貯蓄に回すことができます。さらに、50歳で子供も社会人になって教育費負担が終われば、子供にかかっていた教育費を貯蓄に回すことができます。

 加えて、もう子供に手がかからなくなったら、奥さんも働くことができます。そうなれば、住宅ローンと教育費、妻の稼ぎで、月に20万円くらいは貯蓄していくことができるのではないでしょうか。
 また、50歳くらいになっていると、給料もそれなりに上がっているという方が多いことでしょう。
 だとすれば、たとえ50歳で貯蓄がゼロであっても、年間100万円から200万円の貯蓄は可能。60歳までの間には、1千万円から2千万円の貯蓄が可能になります。
 ここに退職金をプラスし、なるべく長く働いて年金の受給年齢を遅らせれば、老後にお金で困ることはほとんどないでしょう。

老後を考えるなら、できるだけ身軽になっておく

 こう書くと、「もう、50歳を過ぎてしまっているのだけれど」という方も読者の中にはおられるでしょう。
 そういう方は、50歳を過ぎてもかまいませんから、少しでも早く、借金と貯金がプラス・マイナス・ゼロになることを目標に、家計を見直していきましょう。

 2020年の東京オリンピックが終わると、それまでの必要だった人も物も余り、成果が上がらないアベノミクスのツケで、不況がやってくる可能性があります。しかも、5年経ってもデフレを脱却できない現在の日銀の金融政策が破綻をきたすと、日本経済も、大きな打撃を受ける可能性があります。

 だとすれば、こうしたことを前提に、借金をある程度整理して、身軽になっておく必要があるでしょう。

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 先の事はわからない、などと言うと無責任な感じもするが、考え過ぎても貯金は簡単には増えないし、気分も暗くなるというもの。「プラス・マイナス・ゼロ」を目指す、というほうが精神衛生上健全なのかもしれない。

デイリー新潮編集部

2019年6月14日掲載

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