都会で進学・就職したものの「Uターン」した女性が抱えるしんどさの正体

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マイルドヤンキーを否定はしない

 中高時代の友人たちは地元でもやや富裕層に位置していたので、他の家庭より文化資産に手が届きやすい環境にあった。

 しかし、宮崎は子どもの貧困率が全国ワースト6位。小学校時代の同級生には「うちは貧乏」が口癖の子もいたし、やたらきょうだいが多かったりした。また、公立中学で養護教諭をしていた母曰く「準要保護児童生徒(学用品費や修学旅行費、給食費などを市町村が援助してくれる就学援助制度の対象児童・生徒)の家庭も多かった」とのことだ。

 高校へ進学しなかったり、中退する女の子も近所には多かった。そんな子たちはカルチャーに触れないまま大人になり、二十歳前後で妊娠して結婚。いわゆる「マイルドヤンキー」の人生を送っているようである。幸せかどうかなんて他人が決めるものではないので、文化資産に出会わなくたって、彼女らは彼女らなりの世界で生きているのだと思う。

 一方、それなりにカルチャーに触れてきたタイプの人たちは都会に出たがために受けたショックもある。そして、それを乗り越えて今を楽しんでいる人もいる。

 一度都会の蜜の味を知ってしまった私は、とうぶん地元へ帰る予定はない。東京で生きていきたいのだ。都会では少しくらいけったいな格好をしていたり、フリーランスで働いていたりしても、いちいち気に留める人がいない。人の目を気にする必要はない。でもそれは裏を返せば、無視されることでもあるのだ。そんな自由とこれからも、手を取り合い、ときには裏切られながらも付き合っていきたい。

 姫野桂さん連載「『普通の女子』になれなかった私へ」バックナンバーはこちら https://www.dailyshincho.jp/spe/himeno/

姫野桂(ひめの けい)
宮崎県宮崎市出身。1987年生まれ。日本女子大学文学部日本文学科卒。大学時代は出版社でアルバイトをして編集業務を学ぶ。現在は週刊誌やWebで執筆中。専門は性、社会問題、生きづらさ。猫が好き過ぎて愛玩動物飼養管理士2級を取得。著書に『私たちは生きづらさを抱えている 発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』(イースト・プレス)、『発達障害グレーゾーン』(扶桑社新書)。ツイッター:@himeno_kei

2019年6月14日掲載

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