都会で進学・就職したものの「Uターン」した女性が抱えるしんどさの正体
こんな優秀な子、うちでは雇えない
それでも、やはり地元の中では文化資産に恵まれている家庭の子が多い学校だったので「私、毎週『週刊文春』読んでいるんだけど、こないだ姫野さんの本の書評を見つけたよ!」と、地元組のTちゃんに言われた。「SPA!」は売っていないけど、「文春」は売っている。そして、それを毎週読むなんて、やはりバリバリの地元民とは少し違う位置にいる。
東京でしばらく働いた後、Uターン就職をしたMちゃんは、複数の言語を話せて語学堪能だった。ところが地元での就活中、彼女の履歴書の大学名と特技の欄を見た面接官から「こんな優秀な子、うちでは雇えない」と言われ、採用されなかったと話してくれた。
地元の人からすると、高学歴であることより、商業高校を出て資格を持っている方が働き手としての価値があるのだろう。また、地元では国公立である宮崎大学か宮崎公立大学を出て地元の銀行に就職したり公務員になったりすると、「親孝行」と言われる傾向にある。
結局Mちゃんは職業訓練校に通って事務関係の資格を取得し、現在は地元で事務の仕事に就いている。ただ、東京で働いていた頃は手取り20万円ほどもらっていたのが、今は13万円しかもらっていないという。でも、このくらいの手取りが地元では普通だし、彼女は実家暮らしなので家賃の負担がない。
一人暮らしをしていたとしても、家賃自体が安く、3〜4万円も出せばそれなりの部屋に住める。贅沢をしなければ暮らしていけるだろう。しかし、チェーンの飲食店や携帯電話の利用料金などは全国一律のため、そのあたりはどこかで節約しないと厳しそうだ。
Uターン組はなぜ地元に戻ってきたのか。考えてみると、「都会のしんどさ」が推測される。首都圏で未だに働き続けている子の共通点は、「自分のやりたい仕事をやっていること」だ。
首都圏就職組とは定期的に会っていたが、今はUターンをしているMちゃんと新婦のSちゃんはいつも、仕事そのものや仕事の人間関係での悩みが多かった。7年前まで会社員として働いていた私も、それは同じだった。
都会にはなんでもある。今まで自分が欲していた文化資産はいくらでも手に入る。しかし、20万円にも満たない給料での一人暮らしでは、心ゆくまで都会の旨味を味わうことは難しかった。すぐそこにあるのに十分には手に入らない。
だけど、これが好きな仕事をしていたら別だ。私はすさまじく向いていなかった事務職会社員をやめ、フリーライターとなった。
同じ時期、MちゃんとSちゃんは地元に帰った。地元で就職したら給料は減ったが、連休にはアジア圏への海外旅行(宮崎からは韓国や台湾への直行便が出ており、北海道へ行くより安い)や東京ディズニーランドに行ける程度には貯めており、それがリフレッシュになっているようだ。
首都圏就職組と久しぶりに会ったので、帰り際「今度は東京で会おう!」と言って別れた。
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