未だ不振が続く「鳥貴族」、上場後初の赤字の原因は“1品18円の値上げ”ではなかった
東洋経済は「メガハイボール」主犯説
鳥貴族の苦戦が続いている。その原因として挙げられるのが、17年10月の値上げだ。まずはグラフをご覧いただこう。
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折れ線グラフの左側では、客数と売上が急降下し、客単価だけが上昇した時期がある。これが17年10月で、鳥貴族は「全品税別で280円」を「全品税別298円」に値上げした。
たった18円の値上げが、これほど悪影響を及ぼすとは、誰も予想しなかっただろう。折れ線グラフでは18年9月まで売上と客数が文字通りの“右肩下がり”になっているのが明白だ。
その結果、鳥貴族は赤字に陥る。例えば朝日新聞(電子版)は今年3月、「鳥貴族、上場以来初の赤字へ 値上げで客離れ」と報じた。
《焼き鳥チェーンの鳥貴族は8日、2019年7月期の純損益が3億5600万円の赤字(前期は6億円の黒字)になりそうだと発表した。7億円の黒字予想から一転して2014年の上場以来初めての赤字に、業績見通しを下方修正した。(略)値上げによって、客離れが起きたことが理由だという。今期中に少なくとも20の不採算店舗を閉める予定だ》(註:全角数字を半角数字にするなどデイリー新潮の表記規則に改めた。以下同)
もっとも18年9月を底として、売上と客数は回復傾向を示した。その一方で、値上げをしたにもかかわらず、客単価は下がってしまった。この現象を解説した記事が、東洋経済ONLINEが2月に掲載した「鳥貴族『メガハイボール』投入で客単価減の誤算」だ。
《値上げが一巡しただけならば、客単価は前年並みになるはず。客単価まで下がってしまった要因の1つと見られるのが、展開に力を入れている「メガハイボール」の影響だ。
鳥貴族は現在、通常の2倍の量のハイボールを、均一料金である298円で提供している。当初は2018年9月13日~10月17日までの期間限定での投入だったが、好評を受けて10月のグランドメニュー改定と同時にレギュラー商品に組み込んだ。
約700ミリリットルの大ジョッキでハイボールが飲めるため、顧客の満足度は高まった。だが、かえって1人あたりのドリンク注文点数の減少につながった可能性がある。鳥貴族の客単価は通常2000円~2100円(税別)だが、10月以降はそこから50円程度落ちこんでいる。約6人に1人がドリンクの注文を1杯減らせばそうなる計算だ。会社側は「メガハイボール投入と客単価減少の因果関係は明確に確認できていない」とするものの、無関係ではないだろう》(註:中見出しを省略した)
このように鳥貴族の不振を価格面から読み解こうとする報道が多いのだが、フードサービス・ジャーナリストの千葉哲幸氏は「そうは言っても、結局はたった18円の値上げです。ここまで経営に悪影響を与えるものでしょうか?」と疑問を投げかける。
「私が重視するのは店舗数です。鳥貴族は値上げ前の17年7月末で567店舗でしたが、これを翌18年7月に665店舗まで増加させました。この拡大路線の時期と、既存店の客数と売上が落ちていった時期は一致します。私は鳥貴族が、業界関係者の間で言われる“600店舗の壁”の真っ只中にいることが、不振の最大原因だと考えます」
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