「江戸城天守」再建計画 500億円とも言われる費用はどうやって調達するのか

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 入場者数が毎年1割近いペースで増加が続く、空前の「お城ブーム」。各地で、天守を復元する動きが活発となってきた。名古屋城の天守は木造復元を目指しているし、尼崎城は外観復元を進めている。そんな中、江戸城の天守を史実通りに木造で復元させようと運動しているのが、NPO法人江戸城天守を再建する会だ。

「日本の木造建築では、奈良の東大寺大仏殿に次ぐ2番目の大きさになりますね」

 と語るのは、NPO法人江戸城天守を再建する会の初鹿彰信専務理事。

「奈良や京都には、昔の建造物が残されていますが、東京には文化のシンボルと言える伝統的な建造物がありません。江戸城天守を再建することは、単なる観光のためではなく、日本人のアイディンティティ、日本の風格、日本の伝統技術を後世に残すという役割も担っているわけですよ」

 天守が復元されれば、高さは44.84メートル。天守台も含めると58.63メートルになる。14階建マンションに相当するという。姫路城と比べると体積で3倍の規模で、日本で最も壮大で美しい天守になるそうだ。

「江戸城の天守は何度か建て替えられていますが、寛永15年(1638年)に建てた史上最大の天守の復元をめざしています。この寛永天守は、明暦の大火(1657年)で焼失。天守の再建計画があったため、前田家が御影石で天守台を築きました。見栄えを良くするために、寛永の天守台より一間(6尺5寸)低くしています。ところが、4代将軍家綱の補佐役を務めた保科正之が天守の再建より江戸市街の復興を優先したため、天守が築かれないまま今日に至っています」(同)

 皇居東御苑にある天守台跡は、前田家が築いたものだ。その天守台に天守を復元することになる。城郭研究の大家といわれる三浦正幸広島大学名誉教授が、東京都立中央図書館所蔵の「江府御天守図」を基に復元図を完成させた。寛永天守は地下1階地上5階となるが、各階平面図、断面図、正面図も作成している。これをもとにすれば、設計図が書けるという。

 が、皇居にあるため、再建するにはハードルが高い。

「皇居ですから、土地は皇室の専用地で、宮内庁が管理しています。皇室財産を使用するには、まずは世論を高める必要があります。昨年は明治150年、今年は令和がスタートし、新しい天皇となり、10月に大嘗祭があります。そして来年は東京オリンピックと続きます。天守復元の気運を高めるチャンスだと思っています」(同)

 江戸城天守を再建する会は、2004年に任意団体「江戸城再建を目指す会」としてスタートした。13年に「目指す会」から「再建する会」に変更。17年には、100万人署名の国民運動を展開し世論喚起を図ることを決めた。

「土曜日には、東御苑で賛同署名のためのチラシを配布しています。これまで5万5000人から署名をいただいていますが、10万人、30万人と増やしていく予定です」(同)

 そんな中、江戸城天守を再建する会と歩調を合わせるかのように、6月10日発売のコミック誌「ビッグコミック」(小学館)から『江戸城再建』(黒川清作・著)の連載がスタートする。

「小学館は、連載スタートのタイミングを以前から考えていたようですが、やはり、令和に合わせたわけですね。歴史的史実などに誤りがあるといけないので、三浦さんが監修を行っています。建設会社の課長が一念発起して、江戸城天守再建を取締役会に提示する。取締役会でそれが承認され、天守再建に向けて動き出すという設定になっています。これがSNSなどで広まって、天守再建気運が盛り上がればと期待しています」(同)

 世論が高まったら、次のステップは?

「1964年の東京オリンピックでは柔道が種目に加わりましたが、そのために北の丸公園に武道館ができました。このとき、議員連盟ができて実現に至ったのです。天守再建には、議員連盟が必要になってくるでしょうね。参議院議員の松沢成文さんも再建にむけて頑張っていらっしゃいます。できたら、恩賜公園のような形になればと思っています」(同)

 江戸城天守を再建する会は、今年に完成予定のドイツ・ベルリン王宮をモデルに掲げているという。第二次大戦下、英米軍の空襲で焼失したベルリン王宮は、東西ドイツ統一以来、再建が議論されたが、2013年から再建工事が始まり、王宮の外見を復元した新しい複合文化施設「フンボルトフォーラム」となる予定だ。

「ベルリン王宮は、ドイツ民族としての誇りを象徴するものとなっています。再建するため、最初はNPOからスタートしているのです。先を越されたという感じですね」

 江戸城天守、再建するにはいくらかかるのか。

「伝統的な技術と最新技術を駆使して作るわけですが、400~500億円といったところでしょうか。調達資金は、まだ細かくは詰めていませんが、基本的には民間からの寄付になるでしょう。世界中から寄付を募って、あとは、融資をお願いすることになります。入場料収入で返済していくという形になるでしょう。皇居ですから、一般の観光地のように喧噪の場となってはいけません。あくまで静謐な場にしなければならない。そのために、入場料を高めに設定してはという意見もでています」(同)

週刊新潮WEB取材班

2019年6月12日掲載

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