田口淳之介“20秒の土下座”は賛否両論、謝罪の専門家は「効果あり」と指摘
6月7日、東京・湾岸警察署の前で行われた“土下座”の映像に世間は賛否両論である。思わず失笑した、パフォーマンスじゃないか、と言う人もいれば、留飲を下げた人もいたかもしれない。
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大麻取締法違反(所持)の罪で起訴されていた、元KAT―TUNメンバーの田口淳之介被告(33)が保釈された。警察署から出てきた黒いスーツ姿の田口被告は、集まった報道陣に向かって大きな声で、「このたびは私が起こしました事件で、みなさまにご心配をおかけし、誠に申し訳ございません」と謝罪。「金輪際、大麻などの違法薬物、そして、犯罪に手を染めないことをここに誓います」と反省の弁を述べたあと、「本当に申し訳ありませんでした」と言いながら地面に頭をつけて土下座をしたのである。時間にして20秒の出来事だった。
過去、芸能人では、浮気が発覚した芸人・おばたのお兄さんが2017年にライブで土下座。淫行事件を起こしたお笑いコンビ・極楽とんぼの山本圭壱が16年にバラエティ番組で土下座したことがあった。
脳科学者の茂木健一郎氏は8日のブログで、
「ドラッグに手を出したり、依存症になられてしまう方は、日常でストレスを感じたり、心のバランスを崩すことがきっかけになることも多いわけで、そのようなことを起こりにくくするためには心の平穏を保つことが大切で、土下座はそのような平穏に反すると思う」
と、否定的な見解を示した。ところが、
「田口被告は、台本を読むように謝罪を述べていましたが、あの土下座で、彼を許す人も多いと思いますよ。あとはうやむやになって、事件のことは少しずつ忘れられていくでしょう」
と語るのは、日本人の謝罪を研究している九州工業大学の佐藤直樹名誉教授だ。同教授の専門は、刑事法学、世間学、現代評論だが、11年に『なぜ日本人はとりあえず謝るのか―「ゆるし」と「はずし」の世間論』(PHP新書)を出版。略奪や暴動を起こさない、その感性を作り出す独特の秩序である「世間」を研究し、新聞、雑誌、テレビなどで評論活動を続けている。
「田口被告の土下座は違和感があるとの意見も少なくないが、日本の場合は、法律上違法行為が確定する前に謝罪するのが慣習となっています。ああいう事件を起こすと、彼に対する悪感情が生まれてしまうが、それを消してしまうのが土下座なんですよ。土下座するのを見て、世間の留飲が下がるわけです」(同)
この20年近くで、企業が不祥事を起こすと“土下座”するケースが目立つようになってきたという。
「96年、薬害エイズでミドリ十字の幹部が土下座をしましたが、このあたりから、土下座を派手にやるようになってきました。一般の人たちがストレスのはけ口を求めている。何か不祥事を起こすと、土下座をしないと許されない。とにかく自己責任が求められ、世間からの締め付け、抑圧感が強くなってきているのです」(同)
11年の東日本大震災で原発事故を起こした東京電力の幹部が土下座をしているし、12年には火事で7人が死亡した広島県福山市のホテルの幹部も土下座した。
13年に放映されたドラマ「半沢直樹」(TBS)では、視聴率を大きく伸ばした一因は土下座のシーンだった。第7回では、上司に土下座させられる場面では最高視聴率34・5%を記録。最終回の土下座シーンでは46・2%もの視聴率を獲得している。
そういえば、15年に鳩山由紀夫元総理が韓国の植民地刑務所跡地で土下座をしたこともあった。
「なんでも土下座で解決してしまう学校の先生が主人公の漫画『どげせん』なんてのもありました。けれども、私は基本的に、土下座は人間の尊厳性に反する行為ですのでやるべきではないし、やらせるべきでもないと思っています。土下座を強要すれば、刑法で強要罪に該当します。13年に、札幌市のしまむら苗穂店で、主婦が店員に土下座を強要し、その写真をネットに流したため逮捕されました。14年には、大阪のコンビニで客が店長に土下座と物品を強要して逮捕されています」(同)
なのに、なぜ土下座はなくならないのか。
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