NHK「レンタル家族」やらせ騒動 元スタッフが明かす「依頼者を演じたのは私」
依頼者などいなかった
その番組はNHKの海外向けサービス「NHKワールドJAPAN」の、「HAPPIER THAN REAL」。約30分のドキュメンタリーだ。
妻を病で亡くした依頼者が、心の隙間を埋めるために妻と息子と娘の3人の「レンタル家族」と過ごす姿を追っている。昨年11月の放送で、以降、今年1月までに7回、再放送された。
「その撮影は、昨年の6月に行われたのですが」
こう明かすのは、同社の元代行スタッフの鈴木剛志さん(仮名)。60代の元会社員で、演技と喋り方を勉強した経験があるという。
「私はレンタル家族の依頼者として、顔出しで登場しました。しかし私はもともと代行スタッフ。つまり、この件は依頼者などいなかったのです。スタッフである私が依頼者を、女性の代行スタッフが妻と娘、石井社長が息子を演じました。ドキュメンタリーとは言えない内容だったんですよ」
撮影には、鈴木さんの実際の自宅が使われた。
「みんなで寿司を食べて団欒をし、家を出て近所の寺まで散歩する。“4人家族”のなにげない日常を紹介しています。番組スタッフは日本人と外国人の混成で、私たちの演技に気づいていない様子でしたね。これはあとから知らされたのですが、石井社長が、依頼者のフリをしてNHKサイドと打ち合わせていました」
制作サイドとしては、騙された格好になるわけだ。しかし、このようなドキュメンタリー番組においては、依頼者が顔を晒(さら)して出演をOKした時点で、番組の価値は格段に上がる。そのためにチェックが緩くなった側面もあるのではないか。鈴木さんが続ける。
「そもそも、レンタル家族の依頼者は表には出せない面倒な事情や内面的な悩みを抱えているわけです。モザイクであっても、簡単にメディアに出ることはありえません。レンタル家族のサービスを行っているほかの会社は、メディアから“依頼者に直接話が聞きたい”と頼まれても断っているようです。しかし石井社長は“依頼者、用意できます”と言ってしまうのです」
番組制作への忖度では済まされまい。となると、当然、ほかの番組でも怪しいケースが出てきそうなもの……。
(2)へつづく
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