氷川きよし、V系メイクとシャウトで豹変の背景に「非・演歌志向」「業界の苦境」

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シャンソン

 所属事務所に聞くと、

「路線を変更したわけではなく、デビュー以来、色々なジャンルの曲を歌ってまいりました。これからも挑戦していきたいと思います」

 そう言うのだが、ならばなぜこの時期に動画を公開したのか。

 先の山田氏が続ける。

「今年でデビュー20年目なので、世間の注目を集めるという意味合いもあったと思います。実際、ライブでも本人が“今年は色んなことにチャレンジしたい”と話していました」

 氷川自身の事情があったと漏らすのは、芸能関係者。

「氷川さんは長年演歌を歌い続ける中で、他のジャンルでも歌いたいと事務所とレコード会社に訴えていたんです。中でもやりたがっているのはシャンソンでした。ですが、そればかりでは、と今回のような楽曲も歌うことになったのです。また、演歌だけではテレ朝の『ミュージックステーション』など、地上波の有名音楽番組には出られない。動画をアップすることで、そうした番組に出演したいという思惑もありました」

 20年もの月日は様々な思いが去来するのに十分な時間である。

 一方で、その背景に業界の苦境があると指摘するのは、音楽評論家の富澤一誠氏だ。

「1998年に6千億円あった音楽ソフト売り上げが、現在は半分以下です。しかも、演歌に限れば、客層は60代以上で、売り上げは全体の数%しかありません。デジタル配信があるものの、大御所の演歌歌手も本業以外の仕事を入れないと新規にファンを獲得することは難しい。最近では、細川たかしさんもNTTドコモのCMに出演して、一休さんの替え歌を披露するなど、新分野に挑戦しています」

 作詞家の阿久悠氏は生前、「曲作りは時代とのキャッチボールだ」と語っていた。演歌界の貴公子であっても“時代”からは逃れられないのである。

週刊新潮 2019年6月6日号掲載

ワイド特集「傷だらけの勲章」より

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