「夫は発達障害なのかもしれない」とカサンドラ妻が気づいた瞬間
予想外の妊娠、再び
それでも単発的に事件は起こる。そんなときは毎回長文のメールを書いた。
「私は怒っているわけではありません、あなたを責めるつもりもありません、あなたが怒っている内容について誤解があるようです。実際はこのような事情があり、ほかにどうしようもありませんでした。ズルするつもりなどありません」
すると「それは申し訳なかった、言いすぎたかもしれない」と返信がくるようになった。
だから、産後の抜け毛が続いてナーバスになっている私に、笑いながら「ハゲデブチビの三重苦だな」と言ってきても、さらに「痩せたら抱いてやるよ」と顔を覗き込まれても、ネタにして笑い飛ばした。
お酒を飲みに行って帰って来なくても何も言わなかったし、日頃の整理整頓はもちろん、年末などは一人で寝ずに障子の張り替えから大掃除までをして彼の居心地が良いよう家を必死で整えた。
努力の甲斐あって、彼は私に対する敵対心を少しずつ和らげていっているように見えた。
娘を妊娠して以来、初めての平穏を感じた。それで、第一子を出産後初めてセックスをした。どんな流れだったかもはや思い出せないが、夫を怒らせないというテーマに取り組んでいた私には「断る」という選択肢はなく、むしろ夫婦の関係改善のための努力が実ったような達成感を感じていたと思う。もう一人子供が欲しいと考えていたわけではないが、中で出したりしなければ簡単に妊娠なんてしないだろうと考えていた。
ところが。数カ月後、覚えのある気持ち悪さに連日襲われる。夫には何も言わず、検査薬を使い、病院に行った。まさかの妊娠発覚である。驚いたしパニックになった。でも全て一人で飲み込んだ。
結婚して子供ができて、それを生まないという選択肢などはあるはずもなかった。そもそも夫婦の関係改善のために私は努力をしている。その結果の妊娠なのだから喜ばしいことだろう。
そして数日後、前回の教訓を生かして、笑顔で「赤ちゃんできたよ、楽しみだね〜!」と、精一杯嬉しそうに、テンション高く夫に妊娠を報告した。
夫も前回の教訓を生かしたのか、今回はちゃんと返事をしてくれた。
「え、誰の子?」
と。
嫌な予感がしたが、もはやそれは見て見ぬ振りをするしかない。
冗談だと思い込むことにして「えー誰の子だろうね」と笑ってみせた。
[2/3ページ]