「夫は発達障害なのかもしれない」とカサンドラ妻が気づいた瞬間
「カサンドラ症候群」(以下、カサンドラ)とは、発達障害の一種「アスペルガー症候群」(以下、アスペルガー)の夫や妻、あるいはパートナーとのコミュニケーションが上手くいかないことによって発生する心身の不調です。特に夫婦関係で多く起こると言われていますが、最近ではアスペルガーの家族や職場・友人関係などを持つ人に幅広く起こり得ることが知られています。本連載「私ってカサンドラ!?」では、カサンドラに陥ったアラフォー女性ライターが、自らの体験や当事者や医療関係者等への取材を通して、知られざるカサンドラの実態と病理を解き明かします。
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常に「自分は損をしている」と感じている?
当時の主治医から与えられたテーマ「夫を怒らせないようにすること」は、極めて難しかった。これまでで一番の難題だったと思うし、離婚後の今も、面会などの用事でやり取りをすると怒らせてしまうことが少なくない。
ただ、(自分で言うのも何だが)与えられたテーマを無視できない真面目さと、人の性格分析を常にしてしまう気質が相まってその課題には一生懸命取り組んだと思う。そして夫を観察し、対応を試行錯誤するうち、ある仮説を立てるに至った。
(1)ルールが明文化されていない部分について最大限都合よく解釈し期待するので、その期待が裏切られると怒るのではないか。
(2)彼は常に人から悪意をもたれたり、ズルして出し抜かれたりすると感じており、常に自分が損をしていると感じているようだ。
(3)ドラマや漫画で人が怒る場面を見ると、それが理不尽な場合であっても構わず同じように真似をしているのではないか。
ということだ。彼の怒りは私からすれば支離滅裂かつ理不尽だが、上記のように仮定すれば、(1)と(2)に関しては対応ができる……かもしれない。
娘はあんなに小さかったとは思えない程すくすく育ち1歳半になっていた。同年代の子と比べればもちろん小さく、発語も遅いが、絵本の読み聞かせをしようとすればページにじゃれつき絵本を破ったり、ベビーカーで買い物に行けば飛び降りて逃走したりするほどのお転婆で、もはや体の弱さは全く感じさせない。無事に保育園の入園も決まった。
そこで、特に揉めることが多かった家事と家計について全てのタスクを書き出し、分担を明確にすることを提案した。最初のうちは何度言っても乗ってきてくれなかったが、これは「財布を別にすることで、もしかしたら今よりあなたが負担する生活費が減るかもしれない」とプレゼンすると話し合いに応じてくれるようになった。
私に食料品の買い物をさせることと、気分でないご飯を出されるのが本当に嫌だったようで(度々言われていた「底値でもないのに」というのは、二人で愛読していた漫画『きのう何食べた?』〈よしながふみ著〉が出典だったというのは後になって気付いたのだが……)、彼は仕事帰りにスーパーに寄って買い物をして夕飯を作ることをメインに家事の3分の1を担当し、代わりに私は3分の2の家事と、3分の1の生活費を負担することで合意した。分担表を台所にでかでかと貼り、月ごとにやった家事のタスクを集計して、家計の分担と連動させるようにすると、はじめて基本の生活については揉めずに回りはじめた。
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