父親とは形だけの和解、大塚家具「久美子社長」がまた大きな風呂敷を広げている

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 真っ赤なバラの花束を手に“かぐや姫”こと大塚家具の大塚久美子社長(51)が、父・勝久氏(76)を訪ねたのは、平成も終わりを告げようとする4月26日のことだった。勝久氏が経営する匠大塚の新店舗の開店祝いに駆けつけたのだ。4年ぶりの再会に笑顔の親子……。ついに和解かと、世間も胸をなで下ろしたとみえ、株価も上昇した。

 ところが令和の御代となった5月10日、かぐや姫が就任を要請した業界団体の名誉会長の椅子を父は蹴った。そして15日には、遅れに遅れた大塚家具の業績予想が発表された。黒字転換を謳って並ぶその数字を見るにつけ、時代が変わっても、かぐや姫は変わらないことがよくわかる――。

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 遠く離れた所に住む親子でもないのに、4年も会っていなかったということが対立の根深さを物語る。大塚家具の経営方針を巡り、父で創業者の勝久氏を否定し、久美子社長が経営を握ったのは15年のことだ。

 ところが、業績は下がり続け、3年連続で赤字を計上。窮地に立たされた大塚家具は第三者割当増資を頼るしかなかった。そこに登場したのが、中国のネット通販企業、ハイラインズの陳海波社長だった。出資先を取りまとめ、大塚家具の社外取締役に収まった彼は、久美子社長に親子の和解を提案したという。

 事情通に解説をお願いしよう。

「最大76億円の資金調達ができるようになった恩人の提案を無碍にはできないでしょう。久美子社長は、自ら発起人となって創った業界団体『スローファニチャーの会』の名誉会長に就任して欲しいと勝久氏の元へ行ったわけです。とはいえ、名称からもわかるように何をやろうとしているのかよくわからない団体です。会員は大塚家具の子会社や取引先がほとんどだそうですが、勝久さんは今、匠大塚の社長ですよ。今さら、古巣の親睦団体の名誉会長だなんて……。久美子社長としても、父と和解しても大塚家具の経営に口を挟まれたくはないでしょうから、自分はちゃんと誘ったのに向こうが断ってきた、というアリバイを作りたかっただけかもしれません」

 せっかく娘が関係修復の糸口にしようと就任を頼んだのに、それを拒否した父に対し、「勝久氏には、そろそろ潮時ではないか、と申し上げたい」と書いた新聞もあったが、どうやら見当外れの指摘のようである。

 さて、大塚家具がようやく19年度の業績予想を発表した。例年2月初旬に発表されてきたが、〈2019年12月期の業績予想につきましては、不確定な要素があるため、現段階では合理的な予想値の算定を行うことは困難であると判断し、未定としております。業績予想の開示が可能となった時点で速やかに公表いたします。〉(2月15日付)と、先延ばしになっていた。さらに3月には、12月31日だった同社の決算期が4月31日に変更されたこともあり、業績予想の発表は5月15日となったのだ。

 その概略を表にすると以下のようになる。少々わかりにくいのは、決算期を変更したために、19年度は19年1月1日~20年4月31日までの16カ月となっているためだ。そのうち上期を1月~6月の6カ月、下期を7月~4月までの10カ月としている。

「例によって、捕らぬ狸の皮算用です。あまり根拠のある数字とは思えません。黒字化が久美子社長にとって永遠のテーマですから、とにかく16カ月で黒字に持って行くことを前提にしているため、こういう数字になるのだと思います」

 まず、上期は営業利益、経常利益、ともにマイナスで、21億1000万円の赤字である。ところが、下期になると一気に21億3500万円の黒字というV字回復を達成し、〆て2500万円の黒字を確保できることになっている。

「大塚家具は、毎年2月にV字回復で黒字化という業績予想を発表しては、5~6月に下方修正ということを繰り返してきました。今回、上期で赤字の予想をしたのは、6月の計上がすぐ目の前にあるからでしょう。発表後すぐに全く異なる売上になっては、誰からも信用されなくなりますからね」

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