堺雅人「半沢直樹」vs福山雅治「集団左遷!」 銀行ドラマで2人の演技はどこが違う?
一方の堺は
一方、堺雅人は生粋の演劇人。宮崎県屈指の進学校・宮崎南高在学中から演劇部に所属していた。早稲田大学第一文学部に進むと、より演劇に打ち込み、92年には早稲田大学演劇研究会にいた仲間たちと劇団「東京オレンジ」を結成した。
すると、たちまち小劇場演劇界のスターとなる。早大には学生演劇人が無数にいるが、その代表格だった。当時は愛らしいルックスと確かな演技力が魅力だったという。現在もどちらかというと童顔だが、当時はよりベビーフェースだった。一方で大学は、6年在籍したのち中退する。演技で食っていくという腹を括ったのだろう。
90年代半ばからは映画やドラマにも出演するようになったが、最初は小さな役ばかり。演劇のほうはスターであろうが収入は期待できないので、若き日は経済的に楽ではなかったはずだ。
知名度が高まったのは、香取慎吾(42)が主演の大河ドラマ「新選組!」(04年、NHK) で新選組副長・山南敬助を演じ、その演技のうまさが話題になったため。とはいえ、小演劇界では既にスターだったのだから、うまいのは当り前だった。
映画監督兼ドラマディレクターによると「演劇出身の俳優はうまさのレベルが違う」という。
「舞台は幕が上がったらノンストップで演技をしなくてはならず、NGは許されないから、うまくなければやっていけない。しかも観客は、自分を横側からも後ろ側からも見るので、全身で演技するようになる。一方、ドラマは、短く場面ごとしか撮らない上、失敗したら撮り直しが効く。だから、アイドルでも主演ドラマが作れてしまう」
やっと堺に主演作がまわってきたのは2010年。刑事モノの「ジョーカー 許されざる捜査官」(フジ)だった。意外なことに堺の主演ドラマが制作されるようになってから、まだ10年も経っていないのだ。背景には、目先の視聴率に惹かれ、主演にアイドルやアイドル的俳優を起用したがるテレビ局側の事情があるだろう。
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